【後編】「読書会コミュニティの魅力を大解剖! 本好きが集まる秘密やコツを話し合おう」|コミュニティテラス vol.4 イベントレポート
コミュニティテラスvol.4【前編】は、参加者からの「読書会を主催する人はどれくらい本を読むの?」という疑問から始まり、主催者が普段意識している、読書会に参加したくなるコツや雰囲気づくりのポイントをうかがいました。
【読書会の推移】
下図は2018年から2024年10月5日までの、ピーティックスで開催されている読書会の推移です。読書会の開催件数は年々増加傾向にあり、コロナ禍以降もオンラインでの開催は継続して多いことがわかります。
双子のライオン堂 竹田さんは2020年以前からすでにオンラインイベントを開催していたそうです。
双子のライオン堂 竹田信弥さん(以下、竹田):忙しいメンバーが多くて、夜中にやろうってことになったんですよ。さすがに23時にお店に集まるのは難しいけどオンラインのシステムがあるよって教えてもらって、ZoomやSkypeを使っていました。だからコロナ禍でのオンライン移行は僕はけっこう楽でしたね。でも僕の移行が楽でも、ほとんどのお客さんは初めてだから楽じゃない(笑)。最初はやっぱり案内や説明、集客的にも苦労しました。
【質疑応答】
Q:オンラインとオフラインでは、かなり雰囲気が違うと感じています。オンラインの雰囲気作りで工夫されている点があれば教えてください。
竹田:僕はオンラインもやってますが、お二人はオンラインはやられますか。
ええやん!朝活! 川西克典さん(以下、川西):オンラインはもうやってないです。
みんなの読書会 川﨑祐二さん(以下、川﨑):私もやめました。
竹田:いや、でもわかる。リアルとオンラインは別物だと思います。
コロナ禍にお店に集まって開催するのはハイリスクだったから、いつまたあんな状況になるかもわからないので今も両方やっています。海外も含む遠方から参加してくれる方もいるので、オンラインのメリットはあります。
読書会に限らず、リアルだと会話に少し冗談を入れたりできるんですけど、オンラインだと余計な話を入れた瞬間に途切れたり、音声が重なったりして、わけわかんないことになるじゃないですか。だからオンラインは会話というより発表会みたいになっちゃうんですけど、そこは割り切って順番に意見を言う時間を作るようにして。そこに僕が一人ずつコメントを返すような形のファシリテーションをしたり、「あー」とか「ふーん」とか相槌を多めにします。オンラインだと「自分が言ったことって共感されたのかな?」っていう不安があるじゃないですか(笑)。それを少しでも解消できるように丁寧に返す意識はしてますね。
ーーお二人はなぜオンラインをやめたんですか。
川西:マイクやカメラの設定で話が聞こえにくいとすごくストレスがかかるんですよね。顔出しできる方のみ参加できますよとか参加制限をつけてみたこともありましたが、「やっぱり対面の方がコミュニケーションが取りやすいよね」っていう意見が参加者から出た。竹田さんがおっしゃってた通り、オンラインだと主催者側がしっかりとファシリテーションして引っ張ったり、いろいろと意見を募ったりが必要です。
川﨑:ほとんど一緒なんですけど、単純に読書会をオンラインでやることにあまりおもしろみを感じなかったんですよね。なので、続けられなかったというところがあります。
川西:それにオンライン読書会は他にもやっている人が多いから、わざわざ自分がやらなくていいやっていう。そういった意味でも、もうオンラインは完全にやめてもう一度対面だけに戻すことにしました。
川﨑:ただ、オンラインのほうが著名なゲストを呼びやすい。以前、スウェーデンで翻訳してる方が「ちょうど時間が合うんです」って参加してくれました。そこはすごくメリットですけど、自分にはオンラインは合わないなと思ったのでやめました。
Q:こういうことをやったらたくさん集客できたとか、逆に全然お客さんが来なかったみたいなことがあれば教えてください。
川西:やっぱりピーティックスに登録することじゃないですか?
ーーありがとうございまーす!(笑)
川西:僕は初めてホームページを作って、検索で見つけてもらえました。それからいろいろな媒体とかSNSに多面的に出してみて、「ここからよく来るな」みたいなところにちょっとずつ絞っていったり。
自分が行くイベントがどのサイトで申し込んでるのか調べたんですよ。このイベントはピーティックスを使ってるな、これはMeet upを使ってるっていうのを一覧にして。自分が好きなチャンネルがわかると、自分が好きな人にリーチできるんじゃないかなと思ってやっていました。
川﨑:お客さんがついてくるっていうか、味方になってくれる人が多くなってくると、今度はチャンネルをしっかり運用していくことが大切なのかなと思います。ピーティックスを使って自分で「今回やるよ」っていうお知らせをするとか。そういうことをこまめにやるということですよね。
竹田:集客を考えるなら、やっぱり売れてる本を課題本にするのが一番楽です。反対に、狭い狭い「読者は一人もいないんじゃないかな」みたいなジャンルも有効ですね。。例えば、価格が1万円の本、全五巻とか1000ページもある本の読書会に、意外とすぐ人が集まったりするんです。中途半端なものにすると本当に人が来なかったりするんで、ここがおもしろいところですね(笑)。その辺りは両極端で、売れている本で気軽に参加できることを極めるか、ちょっとハードルを高めるかは大事な視点かなと。10人集めるのか30人集めるのかで、やることは変わると思います。
ーーチケット代はあまり関係してこないですか。
竹田:僕の感覚では、例えば本の価格が1000円以下で参加費が1000円とか1500円だと割に合わないと思う人もいるようで、反応が変わるイメージはあります。だけど3000円以上する本の読書会は、参加費に誰も何も言わない。要は3000円もする本ってそんなに流通していないので、読者は読書会の機会がもうないかもしれないから、チケットが高くても「一期一会だから参加しよう」となるみたい。たくさん売れている本だとまだ機会はあると思っちゃうんで、そうするとチケット代が参加するしないの選択権に入ってくるんだと思います。
Q:チケットの価格はどういうところを考慮して設定していますか。
竹田:うちはお店なので利益は出るように考えています。ファシリテーターやアテンドしてくれる方を呼ぶ場合は、その方の費用も少額ですが考慮しての価格設定にはなります。
川﨑:何を求めるのかにもよると思うんですけど、単純に会場費を折半するために会費を集めてお店に渡すのはオーソドックスな形なのかなとは思います。
川西:僕も個人の趣味としてやっている中で、まず自分が赤字を出さないのが絶対基準です。それこそ10年とか20年とか、ひたすら自分のお金から赤字を補填していくなら続けられない。
竹田:僕は、趣味でもある程度主催者はお金を手にした方がいいと思うんですよ。それは儲けるためではなくて、開催の責任があるし、継続するため。「趣味だから」「お金をもらうのは申し訳ないから」とか、どうしても無料にしがちなんですよね。何もないときはそれでいいんですけど、読書会で事故があったときに負債を抱える可能性だってある。趣味でもある程度の利益はストックにしておいて、何かあったらそれを使う方が長く続くんじゃないかなと思います。
川﨑:あとは、読書会で得る価値とは何なのかよく考えます。たとえば映画を観に行くのと読書会に参加するのはどっちが価値があるんだろうとか。金曜日の夜に開催することもあるんですけど、会社のメンバーと飲み会ならたぶん3000〜4000円はかかりますよね。それより読書会の価値の方が高いと思ったらそういう値付けをしてもいいでしょうし。どういうシチュエーションとか、参加者が何を求めているかで価格設定をした方がいいので、1000円が正しいとか2000円が正しいってことはないと思います。
川西:僕も300円、500円、700円、1000円って徐々に上がってきてるんですけど、「この金額だったら何が買えるかな」とまわりと比べて、自分の読書会の方が価値がありそうなら上げています。でも僕はまだ映画には勝てないと思うので(笑)、文庫本ぐらいの価格にしています。
ーー文庫もだんだん価格が上がってますからね(笑)。
川西:文庫本をを追うようにして上がっていく可能性はあります(笑)。
Q:10年以上続けている間にお客さんの傾向は変わりましたか。
竹田:明確に違うのは、本の入手方法ですね。以前は地元の本屋さんかAmazonだったのが、今はほとんどメルカリです。うちは本屋なので、申し訳なさそうに「メルカリで買ったんですけど……」って教えてくれます(笑)。
ーー10年間ずっと参加してくれてる方はいますか。
川西:10年ずっとはいないですね、長くて6年くらい。転職や引っ越しなどでライフスタイルが変わると来なくなる人もいます。だからといって年代が固まったり男女比とか新規参加とリピートの比率が変わることもあんまりないんだなっていう。3年ぶりに来ても「メンバーは変わってるけど雰囲気は変わらないんですね」なんて言われます。
竹田:秘伝のタレみたいな感じですね。継ぎ足されて継ぎ足されて、参加者が置き土産として場の雰囲気は残していく(笑)。
川﨑:結婚は離れる理由のひとつかなとは思います。僕の読書会でも何組か結婚した方もいらっしゃるので。だけど「子育てが落ち着いてからまた参加するようになりました」っていう方もいますよ。
竹田:10年間ずっと参加してくれている方は何名かいますね。途中で抜けたりもありますが、10名くらい。ただ、全部の読書会に顔を出すかと言えばそうではなくて、この哲学のシリーズに出る人、ビジネス本の読書会に出る人、のような感じでそれぞれが好きな読書会に出る感じです。シリーズごとに常連さんもいますけど、だいたい10人の参加者に対して3〜5人くらいはゆるくリピーターで残り5人くらいは新しい人ですかね。
川西:「リピート参加者は多いんですか」と聞かれることがあるんですけど、リピートの定義ってむずかしくて。3ヶ月に1回来る人もいるし、1年ぶりとか2年ぶりの人もいるから、その人たちをリピート参加って呼んでいいのかなみたいなところもありつつ(笑)。
ーー参加者が変わっても雰囲気は変わらないために意識されてることはありますか。
竹田:うちの場合はお店でやっているので、そこで最低限の雰囲気は変わらないかな。あと、さっき言っていたように、よく来ていた方が結婚されたり子どもが産まれたりすると、その人に合わせた時間帯にしたりとか、相談するんです。リピーターや新規問わず、積極的に参加してくれる人に合わせていく傾向はありますね。それで参加者も大きく変化しないようにはしていたり。
川西:雰囲気は課題本によって変わるところはあるかな。おすすめ本を紹介する会のほうが過去に参加してくれた人が多めになり、課題本の回はリピート層よりも新規参加者が増えます。本に引っ張られてきてるんだろうなっていうのを顕著に感じます。
Q:長く続けるために、参加者の満足度を高めるポイントはありますか。
竹田:お客さま満足度も大事なんですけど、長く続けられる秘訣はたぶん、自分が楽しんでいること。嫌なことはしないというか、嫌な方向に行かないようにしています。来てくれるお客さんは大切なんですけど、自分の環境が変化して「誰にも会いたくない」みたいになるかもしれない(笑)。なので自分のメンタルや体調をどう調整するか。健康も大切だと思います。
川﨑:やっぱり自分が好きなことだから続けられるので、どういう状態だと好きでい続けられるのかを考えるのは重要だと思っています。私の場合だと、普段なかなか会えない方をゲストにお呼びしてみたり、好きな本屋さんで開催するためにアタックすることにモチベーションを感じているところがあるので続けられる。普段リーチできない人たちに読書会というツールを使ってつながれるのはすごく大きい。自分が好きなことを見つけて、それを伸ばしていけばいいのかな。
川西:禅問答みたいな回答になるんですけど、続けるコツは、ただ続けるしかない(笑)。読書会だけじゃなくイベントあるあるとして、最初の二回くらいは集まるのに、そのあとしばらくは人が集まんないのがよくあるパターン。そこを乗り越えられるかどうかは、好きだったらやり続けるしかない(笑)。その谷で諦めるのもいいんですけど、その谷を超えるとだんだんまた人が戻ってきて、安定してくる。
あと、リピートしてもらえるかは最初の体験がすごく重要だと思うので、読書会が初めての人が楽しめるにはどうしたらいいかは特に考えます。最初に「おもしろくない」っていうレッテルが貼られちゃうと、他の読書会にも行ってくれなくなると思うので。僕は読書会文化がもっと広まってほしいんです。「読書会って何やるんですか?」っていうのを答えなくていいくらいになればいいなって(笑)。
竹田:僕も読書会文化を広げたいと思ってます。お客さんには「うちだけじゃないんで、僕のやり方がおもしろくなかったら他のとこ行ってくださいね」みたいなことを言ってて(笑)。読書会をやってる人はみんなそういう感じだと知れてよかったです!
【終了後のアンケート】
満足度の高い点として以下のお声をいただきました。
「読書会というピンポイントなテーマが素晴らしいです!」
「具体的な運営方法が聞けたところです」
「少人数で気さくに登壇者と参加者が交流できた点」
「Peatixの方々とも直接お話しする機会がありとても近く感じた。イベント主催者としてイベントに参加することが無かったので、横の繋がりの広げ方を目の当たりにし参考になった」
質疑応答についての良かった点として、
「質疑応答の時間がたっぷりあったこと」
「みなさんの質問もたくさん出て、楽しかったです」とのお声がある反面、
「もっと参加者との質問時間を増やしてもらえたら嬉しい」
「全員がまんべんなく質問できる機会があるとよい」というご意見もありました。
できるだけたくさんの方が気兼ねせず発言できる雰囲気になるように心がけていますが、さらに場をあたためる工夫を考えていこうと思います。ご回答ありがとうございました。
【概要】
コミュニティテラスVol.4
イベントページ日程
2024年10月8日(火)テーマ
「読書会」
ゲスト
竹田信弥(たけだ・しんや)さん
東京都生まれ。高校時代にネット古書店として双子のライオン堂を開業。2013 年4月に文京区白山でリアル店舗をオープン。2015 年10月に港区赤坂へ移転。読書会を中心にイベントを多数開催。著書に『めんどくさい本屋―100年先まで続ける道 (ミライのパスポ)』(本の種出版)。文芸誌「しししし」発行人兼編集長。『街灯りとしての本屋』(雷鳥社)構成を担当。共著に『これからの本屋』(書誌汽水域)『まだまだ知らない 夢の本屋ガイド』(朝日出版社)など。
▶ピーティックス グループページ 双子のライオン堂
川﨑祐二(かわさき・ゆうじ)さん
2014年からスタートした「みんなの読書会」の主宰者。 毎月1回以上は開催することを心がけ、10年目の読書会。
▶ピーティックス グループページ みんなの読書会
川西克典(かわにし・かつのり)さん
大阪出身。横浜在住。自分が本を読むきっかけづくりのために2014年4月より「ええやん朝活」を立ち上げ。以後、月2回のペースで神保町を中心に様々なテーマ・形式で読書会を開催中。本業は渋谷のIT企業にて会社員、その他では読書会以外に音楽フェスや映画祭の運営にプロボノで携わる。
▶ピーティックス グループページ ええやん!朝活!
コミュニティテラスは、主催者どうしで知識や情報を共有することができるので、ひとりで考えるよりもたくさんの問題解決方法やおもしろいアイデアの芽が見つかります。現在コミュニティやイベントを主催していなくても、テーマにピンときたらお越しください。お茶やお酒を飲みながら、心地よい対話を楽しみましょう。
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