愛の形はひとつじゃない。合意の上で複数人で交際する「ポリアモリー」という関係性 [PrideMonth2024 コミュニティインタビュー #4]
毎年6月は、LGBTQ+の権利について啓発を促すイベントやパレードが世界各地で行われる「プライド月間(Pride Month)」です。
イベント・コミュニティプラットフォームのピーティックスでも、LGBTQ+コミュニティによってさまざまなイベントが開催されています。
そこで、プライド月間を記念して、LGBTQ+当事者とその周囲の人々をサポートするコミュニティの主催者へインタビューを行いました。
今回お話を伺ったのは、ポリーラウンジ幹事・きのコさん、梨谷美帆さん。
ポリアモリーをはじめとした、ノンモノガミーな恋愛・ライフスタイルについて考えたい方のための交流会を開催されています。
恋愛は「する/しない」を含めみんなが当事者。さまざまな関係の築き方を考えるコミュニティを運営されているお二人に、ポリアモリーというライフスタイルや場づくりについて伺いました。
ーーきのコさん、梨谷さん、本日はどうぞよろしくお願いいたします!早速ですが、ポリーラウンジさんの活動内容をご紹介いただけますか?
きのコさん:
一言でいうと、ポリアモリーに興味がある人たちの交流会をしています。
梨谷美帆さん(以下 梨谷さん):
ポリアモリーだけではなく、オープンマリッジ(夫婦が互いに第三者と性的関係を持つことを認め、それを不貞または不倫と見なさないことに同意する結婚)やリレーションシップアナーキー(通常のルールや社会的なルールに囚われることなく、交際相手と同意したルールや規範に従って交際関係を構築する)など、モノガミー以外の関係性に興味があったり、実践していたりする方や、そういった方のパートナーも参加されています。
ーー改めて、「ポリアモリー」の定義を教えていただけますか?
きのコさん:
3人以上からなる関係性の形です。 1人に複数のパートナーがいたり、 あるいは3人以上の複数人で交際していたり。その際、パートナー全員に秘密にせず、合意を得た上で付き合っている恋愛スタイルのことを指します。
また、複数の人を好きになることがあるという「ポリアモラスな性質」と、実際に合意を得て複数人との関係性を築いている「ポリアモリーなライフスタイル」は別だと考えています。
梨谷さん:
「相手がポリアモリーだったら、浮気を許さないといけないの?」と言われることもありますが、そうではないです。ポリアモリーと不倫・浮気はパートナーに秘密にしているかどうかという点で異なり、複数人との交際をできるだけ倫理的に実践する形の1つがポリアモリーだと思っています。
きのコさん:
ポリーラウンジとしては必ずしも「不倫や浮気をやめてポリアモリーにしなさい」と言っているわけではないですが、それぞれの違いは明確に区別しています。
ポリアモリーというライフスタイルがあることや、それを実践して幸せに生きてる人がいることを知らず、複数人のことを好きになったら「もう浮気をするしかないんだ」あるいは「我慢するしかないんだ」と思い込んでる人はまだまだ多いなと感じています。
ーーコミュニティを始められた背景やきっかけは何だったのでしょうか?
梨谷さん:
LGBTQ+コミュニティ内で「ポリアモリーについてもっと話せる場所を作りたいよね」となり、広がっていきました。LGBTQ+とポリアモリーの関連性は深く、 バイセクシャルやパンセクシャルなどの人たちの中にポリアモラスな関係を望む人が多いと統計的にも言われています。
きのコさん:
最初は5、6人ぐらいでの小さなオフ会という感じで、カラオケルームなどでポリアモリーについて語り合ってたと聞いています。ポリアモリーに関する書籍が出るたびに、どんどん人数が増えていっている感覚があります。
ーーポリーラウンジさんが大切にされていることはなんですか?
きのコさん:
やっぱり「否定しない」ことですかね。
ポリーラウンジには、ポリアモリーではない人、ポリアモリーを受け入れられなくて苦しんでる人、浮気や不倫をしている人など、いろんな人が来ます。そういう人たちにポリアモリーをするべき、ポリアモリーじゃないとダメです、とは絶対言わないようにしています。
できるだけ自分も他人も傷つかないライフスタイルの方がより望ましいよねとは思っていますが、様々なあり方がありますよね。望む生き方ができていない人や、望む生き方が人と違う人を否定しないように意識しています。
梨谷さん:
ポリアモリーを実践したくても上手くできない人、ポリアモリーを受け入れたくても抵抗感があって受け入れられない人もいます。
ポリアモリーにもいろんな実践の形があるので、「ポリアモリーだからこうすべき」「そんなのポリアモリーじゃない」と強要しないことを大切にしています。悩んでいる人を排除しないコミュニティを作っていけたらと思っています。
ーー活動していてよかったと感じるのはどんな時ですか?
梨谷さん:
ポリアモリー当事者が、「1人だけじゃなかった」と安心してくれる瞬間がすごく嬉しいです。また、 ポリアモリーではない人でも「恋愛観が広がった」と言ってくれたり、当事者以外にも役に立つと嬉しいなと感じます。
恋愛は「する/しない」を含めみんなが当事者なので、ポリアモリーについて自分には関係ないと思っていても、パートナーがポリアモリーに興味を持つかもしれないし、これから出会う人がポリアモリーかもしれません。他人事じゃない分、感情を揺さぶられる部分もありますが、みんなが当事者意識を持って考えている瞬間がすごく好きだなって思います。
きのコさん:
「初めてポリアモリーや恋愛、性について他人に話すことができました」と言ってもらえることがやっぱり嬉しいです。
世間的にはこういう場がまだまだ少ないので、 ポリーラウンジが初めて自分のことを話せる場になる人がいっぱいいるだろうから、 もっと場作りをしていきたいというモチベーションになります。
恋愛の話はみんな日常的にしていると思いますが、友達にポリアモリーだと話すと、否定されたり価値観を押し付けられたりすることもあります。心配して言ってくれていたとしても、そういった反応があると話しにくくなってしまいますよね。なので、否定されない・決めつけられない場が大切だと実感しています。
ーー最後に、6月のプライド月間にあたってLGBTQ+当事者やアライ(LGBTQ+を理解し、支援したいという考えを持つ人や団体)へメッセージをお願いできますか?
きのコさん:
ポリアモリーでない人やポリアモリーを実践していない人、不倫や浮気をしている人はポリーラウンジに参加してはいけないんじゃないか、と考える人も多いですが、全然そんなことはないです。ポリアモリーを否定しない限り、当事者でなくても、興味がある人や研究者など、どんな方にも門戸は開かれていると伝えたいです。
また、もっと多くの人にポリアモリーに関するイベントやコミュニティをつくってほしいと思っています。「自分でもイベントをやってみたい」という方がいれば、ぜひ相談してほしいですし、応援もしています。ポリーラウンジも安定的に運営していきたいので、スタッフとして開催のサポートをしてくださるのもとても嬉しいです。
梨谷さん:
ポリーラウンジを当事者だけの会にはしたくないと考えていて、恋愛そのもののあり方について話し合ったり、ポリアモリーを通じて嫉妬や不安などの感情をどうコントロールするか、パートナーとのより良い関係の築き方、人を大事にするとはどういうことかなど、普遍的なテーマを一緒に考えています。これはどんな付き合い方をしていても大切な話なので、いろんな人に参加してほしいですね。
人と付き合ったり、愛していく形の選択肢を広げていきたいと考えているので、現状に窮屈さを感じていたり、これでいいのかと悩んでいる人は、いつでも気軽に来てもらえたらと思います。
ーーきのコさん、梨谷さん、ありがとうございました!
ポリーラウンジ
ピーティックスページ:https://peatix.com/user/2011689
ウェブサイト:https://www.facebook.com/polylounge/?locale=ja_JP
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