メンタルヘルスと教育で、LGBTQ+の子ども・若者のより良い今と未来を作る[PrideMonth2024 コミュニティインタビュー #3]
毎年6月は、LGBTQ+の権利について啓発を促すイベントやパレードが世界各地で行われる「プライド月間(Pride Month)」です。
イベント・コミュニティプラットフォームのピーティックスでも、LGBTQ+コミュニティによってさまざまなイベントが開催されています。
そこで、プライド月間を記念して、LGBTQ+当事者とその周囲の人々をサポートするコミュニティの主催者へインタビューを行いました。
今回お話を伺ったのは、NPO法人 Proud Futuresの代表・向坂あかねさん、小野アンリさん。
それぞれボストンと福岡で培ってきたLGBTQ+の子ども・若者支援の経験や知識を持ちより、2020年にProud Futuresを発足。
「LGBTQ+の子ども・若者が安心な気持ちで、自信をもって、自由に生きられる社会」の実現を目指し、主にメンタルヘルスとインクルーシブ教育の観点で子ども・若者のサポートをされています。
ーー向坂さん、小野さん、本日はどうぞよろしくお願いいたします!早速ですが、Proud Futuresさんの活動内容をご紹介いただけますか?
向坂あかねさん(以下 向坂さん):
私たちは、LGBTQ+の子ども・若者とサポートする大人へのリソース作りと共有を通してLGBTQ+の子ども・若者にとってより良い今と未来を作ることをミッションにしています。目指すのは、LGBTQ+の子どもや若者が安心感を持ち、自信を持って自由に生きられる社会です。
活動の軸となっているのが、私たち2人のこれまでの経歴です。私はアメリカと日本で資格を持っているセラピストで、 個人のメンタルヘルスのサポートだけでなく、社会全体も良くしていくアプローチを大切にしています。
小野アンリさん(以下 小野さん):
私はもともと小学校の教員でしたが、LGBTQ+の子どもや若者の居場所作りをサポートする活動は大学生のときから行っています。Proud Futuresでは、主にLGBTQ+の子どもたちを包摂する学校づくりをしています。
学校の先生たちと協力して、LGBTQ+の子どもたちにとって安心で安全な場所にしていくための取り組みや、どのように性の多様性について教えていくのかという授業づくりなども行っています。
ーーコミュニティを始められた背景やきっかけは何だったのでしょうか?
小野さん:
もともと、私は福岡、 あかねさんはアメリカのボストンで活動をしていました。
Proud Futuresを立ち上げる前から友達で、お互いの方向性が似ていたこともあり、私が福岡で活動しているFRENSという団体であかねさんに協力してもらって研修をしたり、ユース向けのラジオに出演してくれたりと、一緒に活動することがありました。
そこから一緒に活動したいよねとなり、Proud Futuresを立ち上げました。
向坂さん:
私たちが一緒に活動するのは、疑いようもないやるべきことだよねという感覚が私にはありました。その理由は、それぞれの国と地域でユースワークをしてきたことに対してお互いリスペクトしていたこと、 子どもや若者の声と選択を最も大事にしてサポートをするという共通の理念があったことだと思います。
なので、2人で何かを始めて、それに賛同してくれる人を探すのは自然な流れでした。
ーー活動される中で、関わる人たちにどんな影響を与えていると感じていますか?
向坂さん:
LGBTQ+の子ども・若者と関わる人に向けた研修を行っているので、研修を受けた人たちが関わる子ども・若者たちにインパクトがあったらいいなと思っています。
受講した人からは、研修で今までの自分が持っていた観点に置き換わる新しい観点を得ることができて、長期スパンで役立つ考え方を知ったというフィードバックをもらえることがあります。
小野さん:
長期的に役立つ考え方の一つが、「ポジティブ・ユース・ディベロップメント(ユースが自分の経験からあらゆることを体得し、内面的な成長をするプロセス)」です。
貧困世帯の子ども支援の現場などいろいろな団体の人たちと活動をしてきた中で、大人が子どものことを「守ってあげなければいけない弱い存在」として見ていることが結構ありました。それとは全然違うのが「ポジティブ・ユース・ディベロップメント」で、私自身も子どもたちとより良い関わりができるようになったと思っています。
研修プログラムを受けた先生たちがどのように変容し、その変化が子どもたちの状況をどれほど改善したかを測るのは難しいことが多いです。なので、研修のスタイルとしては最低ラインを上げることを重要視してきました。1回の研修で全く問題がない状態にすることは難しいですが、「半端なくやばい状況」がなくなれば良いなと思っています。
そのために、誰一人として嫌な気持ちで研修を終えないようにすることが大切だと考えています。LGBTQ+に関する差別、抑圧について学ぶことは、心地悪く感じたり、罪悪感を抱いたりすることがあります。性の多様性に対する感覚をほぐし、安心して学べるような研修を提供することが、子どもたちの状況が改善されることにつながると思っています。
ーーお二人が目指したい社会を教えてください。
向坂さん:
「この社会は勝手に作られて、被害を被っている人たちがいる」と思いたくなることもありますが、ユースワーカーとして、シスジェンダーのクィア女性として、メンタルヘルスの専門家として、今のこの社会に加担した責任もあると思っています。そしてそれは、今の子ども・若者たちの責任ではないんです。
私と同じように考えない人を責める気持ちはありません。ただ私には自分がこの社会をちょっとずつ変える責任もあるし、そうしたいというパッションも持っています。
小野さん:
LGBTQ+の子ども・若者たちが、日本のどこで生まれてどこで育ったとしても、安心な気持ちで自信を持って自由に生きられる、それが当たり前の社会にしていきたいというのが1番強いですね。
「たまたまこの町に生まれていたからラッキーだったけど、隣町に生まれていたらハードモードだった」ということが起こるのは、最低限取り組むべきことの基準がなく、現場や先生によって状況が変わってしまうからです。そのような偏りなく、どこで生まれ育っても安心して生きられる社会にしていきたいと思っています。
ーー最後に、6月のプライド月間にあたってLGBTQ+当事者やアライ(LGBTQ+を理解し、支援したいという考えを持つ人や団体)へメッセージをお願いできますか?
向坂さん:
私が私であることで、もし誰かの役に立つことがあるとしたら、それは「クィアでも、面白おかしく生きていくことができる」ことを体現することだと思っています。私はこんな感じで生きていて、それ自体が意味のあることだという感覚を持てるようになりました。
アライに向けては、ある特定の被抑圧集団のアライであろうとするために、私含め多くの人は、 その被抑圧集団について学ぼうとするのが最初の一歩であることが多いです。それをやらないよりはやった方がいいと思うんですけど、その過程で自分自身について学ぶことを放棄しないでほしいと思います。自分がどう変わったのか、どうありたいかという目線が抜け落ちたまま自分ではない誰かについてだけ学んでしまうと、子どもや若者たち自身の声を置き去りにしてしまうとか、思い込みに基づいて行動してしまうリスクがあるので、アライであろうとする自分自身と向き合うことを大事にしてほしいと伝えたいです。
小野さん:
私はトランスジェンダーで、ノンバイナリーでパンセクシャルでパンロマンティックです。
今の30~40代やそれより上のLGBTQ+の人たちは、長生きするビジョンを持たず若い時代を過ごす人が多かった世代だと思っていて。私自身もそうだったんですけど、もうすぐ40歳になるということで、生きてると色々大変なこともあるけど、悩んだり、楽しいことがあったり、心地よく感じるものを見つけたりしながら今も生活しています。生きているといいこともあるよ、と子どものころの自分に言いたいですね。
アライには、アライであろうとするということは、ずっと学び続け、自己について知り続け、「当事者がよりよく生きていけるような社会にするために一緒に連帯する」という気持ちを持ち続ける、 終わりのないものであることを知ってもらえたらと思います。
自分の気づきたくない嫌な部分に気づいたりもするから大変ですが、それでもより良くなっていけることはすごく嬉しいことだと思っています。
私も自分が当事者でないことに関してのアライなので、一緒に学んだり、気づいたりをずっとし続けられたらなと思います。
ーー向坂さん、小野さん、ありがとうございました!
NPO法人 Proud Futures
ピーティックスページ:https://proudfutures.peatix.com/
ウェブサイト:https://www.proudfutures.org/
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