「多様な若者の声が届く社会へ」ひとりの一歩が未来を変える力になる [U30コミュニティインタビュー #1]
SDGs、ジェンダー平等、政治参加――。いま、さまざまな社会課題に関心を持ち、行動を起こす若者たちが注目されています。若い世代が作り出すコミュニティは、それぞれのテーマに真剣に向き合い、多くの人を巻き込みながら活動を広げています。
イベント・コミュニティプラットフォームであるピーティックスでも、政治や環境問題、ジェンダーなどをテーマに若者たちが数多くのイベントを開催し、新たなつながりを生み出しています。
今回は、そんな若者コミュニティの活動や、それを支える思いについてお話を伺いました。
お話を伺ったのは、持続可能な社会に向けたジャパンユースプラットフォーム(Japan Youth Platform for Sustainability:以下「JYPS」)の本行さん。
SDGsやさまざまな社会課題に関する若者の声を集約し、政府または国際機関にその声を届けるためのアドボカシー活動をされています。
ーー本行さん、本日はどうぞよろしくお願いいたします!早速ですが、JYPSさんの活動内容をご紹介いただけますか?
私たちの団体は、「若者の、若者による、社会を変えるためのプラットフォーム」です。主な活動内容としては、イベントやアンケートなどを通して得た日本の若者の声、主に政策に対する意見やSDGsに対する意見を集めて、それを報告書にまとめ、日本政府やその他国際機関に届けています。また、国際会議にも自分たちで参加し、海外ユースとの意見交換を行いながら日本の現状を知ってもらったり、海外から新しいインプットを得て帰国後に報告会を開いたりしています。
運営者側も30歳以下と定義していて、現在は16歳から26歳の約20名のメンバーが活動しています。ただ、若者と一括りにしても非常に多様だと感じています。今は「若者」という括りで活動していますが、将来的にはその中の多様性も受け入れられるようになればいいなと思っています。
ーーコミュニティが始まった背景を教えてください。
JYPSは2015年1月に設立され、今年9年目を迎えました。立ち上げの最初の段階では、私は直接関わっていなかったのですが、東日本大震災での防災プラットフォームがきっかけだったと聞いています。当時、防災に関する意識や人々を包括的にサポートする方法を議論する会議が設けられた際、ユースの意見を代表して発言する人がいなかったそうです。
その結果、そうした会議に参加するユース団体の必要性が高まり、そのニーズに応える形でJYPSが設立されたと聞いています。
ーーコミュニティを運営する上で、一番大切にしていることは何ですか?
若者の意見を届けるプラットフォームだとは言っていますが、やっぱり1人1人が自分の意見を持つことが大切だと思っています。もちろん私たちは運営側ですが、それでも自分の思いを乗せて発言することで伝わるものがあると感じています。ただ意見を集めて届ける「運送会社」みたいな存在ではなく、もっと主体的に関わることが重要だと思っています。
社会課題は難しいとか、ハードルが高いと思われがちですが、私たちの場では、みんなでゆっくり噛み砕きながら考えていくことを大事にしています。それに対して必ず賛成か反対かを決める必要はなくて、とりあえず自分の中で考えてみることが大切だと思っています。その上で「わからない」なら「わからない」でいいですし、まずは自分で考えて意見を持った状態で会議に臨む、そんな姿勢を大事にしています。
ーー若い世代を巻き込むために、工夫されてることはありますか?
まずはハードルを下げることを意識しています。いきなり「政府にアプローチする」という堅苦しい活動ばかりではなく、「自分たちはSDGsのために何ができるんだろう?」といった触れやすいテーマからスタートしてもらうのが良いと思っています。たしかに最終的には政府の会議に持っていくこともあるので難しい内容になることもありますが、そこに至るまでのサポートを工夫しています。
例えば、日常の中で「なんでだろう」と思ったり、「こうなってほしい」とモヤモヤしていることがあれば、まずはそれを私たちに届けてもらいます。それをSDGsの枠組みに当てはめることで、社会を少しでも良くする手助けができると考えています。
ーーあなたのコミュニティを一言で表すと?
「自分自身の考えを身につけていく場」だと思っています。
私たちは社会課題を考えるコミュニティで、実際の活動は政府への提言など固いテーマが多いですが、最初から国際問題への関心が強い人だけが集まる場ではなく、「なんとなく社会課題に興味がある」「何かできるかも」という軽い気持ちで入ってくる人もたくさんいます。
もちろん、その中には意識の差があることもありますが、活動を続けていく中で、それぞれが自分の意見をしっかり持てるようになっていくのを感じます。ただ団体の意見に流されるのではなく、「私はこう思う」と自分の考えを形にしていく場になっています。
ーーコミュニティの活動やイベントが、メンバーや参加者にどのような影響を与えていると感じていますか?
若者やユースコミュニティが今、社会に求められている存在だということを、イベントを通じて伝えたいと思っています。また、メンバーや参加者自身にも「こんなにも機会があるんだ」ということを知ってほしいと考えています。
例えば、学生でいる間に官公庁の方々と直接話す機会を持つのはとても難しいと思っていましたが、この団体に入ったことで、そうした道が意外と開けていることに驚きました。官公庁の方々も「若者と直接対話したい」と考えているんです。投票率の低さなどから「若者は政治に興味がない」と思われがちですが、実際には思いを持っている人が多い。その意見が求められているんだと伝えることができれば、もっと多くの人が意見を発信しやすくなると思っています。
ーー今の若い世代に伝えたいことはありますか?
「まず1歩踏み出してみてほしい」ということですね。誰も意見を持っていないわけではなく、きっと多くの人が自分の考えを持っていると思います。ただ、「自分たちが行動したところで変わらないだろう」と諦めてしまうのが寂しいと感じています。たしかに自分1人では変わらないかもしれませんが、それを周りに呼びかけることで可能性は広がると思います。
イベントの参加者から「そういう活動って意識が高い人や高学歴の人しかできないでしょ」と言われることもあります。でも、実際はそんなことはなくて、私はニートだった時にこの団体に入りましたし、大学生だけでなく専門学生も参加してくれています。批判するだけじゃなく、一度そのステージに上がって、一緒にやってみてほしいです。それが「1歩進む」ということだと思います。
私たちの団体は、少しだけ「やってみよう」という気持ちが強かった人たちが集まっているのかもしれません。だからこそ、まずはイベントに参加して「聞いてみよう」から「やってみよう」につなげてくれる人が増えたら嬉しいです。
ーーコミュニティ運営で直面した課題や困難があれば教えてください。
まず1つは、担い手をどう継承していくかという問題です。若者でいられる時間・若者として活動できる時間には限りがあり、メンバーの流動性が高いという課題があります。私たちの団体では創業メンバーはすでにいませんし、今のメンバーもどの程度続けられるのかわからない。そんな中で数年先の目標に向かって活動をしていくことに難しさを感じることは多々あります。
加えて、若者に求められることや若者が求めることも年々変わっていきます。私がいつまで代表を務めるかわかりませんが、次の代表が私と全く同じ考えを持っていなくてもいいと思っています。ただ、「世の中をより良くしたい」「若者の意見を届ける」という芯の部分だけは変わらず、周囲の課題が変化していっても柔軟に対応していける団体でありたいと考えています。例えば、最近では子ども家庭庁や選択的夫婦別姓のような新しいテーマが注目されていますが、震災直後は原子力発電への意見が多かったように、若者が取り組む課題も時代によって変わっていきます。そうした変化に対応しながら担い手を確保していくのは難しいと感じています。
もう1つの課題は、“若者”という立場で見られることです。若者が会議に参加することで見栄えが良くなるという理由で招かれることもあり、実際に2時間会議に拘束されても議論にあまり反映されないこともあります。確かに社会経験が少ない若者が多いのは事実ですが、それでも私たちの意見をきちんと届けたいと思っています。
ーーこれからコミュニティをどのように発展させていきたいですか?
私たちの団体だけでなく、若者団体という存在がもっと世の中に認められるようになったら良いなと思っています。組織形態としても、しっかりした形を目指し、法人化なども視野に入れています。知名度を高め、社会的に認められる団体として活動の幅を広げたいと考えています。
私たちは大学生だけでなく、多様な属性を持つメンバーが集まった団体で、ある意味稀有な存在だと思います。だからこそ、こうした団体の社会的立場を確保し、多くの人に存在を知ってもらうことで、より広範囲に活動できるようになればと思っています。
また、若者の流行や価値観は頻繁に変わります。それを社会に理解してもらうためにも、「こんな団体があるんだよ」ということをうまく伝えたいです。そして、それに対する支援がもっと増えていけば良いなと思います。
ーー本行さん、ありがとうございました!
JYPS
ピーティックスページ:https://peatix.com/group/73037
ウェブサイト:https://www.jyps.website/