「ワクワクしなくちゃ始まらない!」ーー生きたい社会は自分たちで作る、 NO YOUTH NO JAPAN [U30コミュニティインタビュー #3]
気候変動、ジェンダー平等、政治参加――。いま、さまざまな社会課題に関心を持ち、行動を起こす若者たちが注目されています。若い世代が作り出すコミュニティは、それぞれのテーマに真剣に向き合い、多くの人を巻き込みながら活動を広げています。
イベント・コミュニティプラットフォームであるピーティックスでも、政治や環境問題、ジェンダーなどをテーマに若者たちが数多くのイベントを開催し、新たなつながりを生み出しています。
今回は、そんな若者コミュニティの活動や、それを支える思いについてお話を伺いました。
お話を伺ったのは、一般社団法人NO YOUTH NO JAPANの沼子真生さん。
NO YOUTH NO JAPANは、大学生から社会人を中心とした団体で、「若者が声を届け、その声が響く社会」を目指して活動しています。Instagramでは、「U30世代のための政治と社会の教科書メディア」を運営し、若い世代に向けた情報発信を行っています。
2019年7月の参議院議員選挙をきっかけに活動を開始し、若い世代の政治参加をより身近なものにするための取り組みを続けています。
ーー沼子さん、本日はどうぞよろしくお願いいたします!まずは、NO YOUTH NO JAPANの活動内容をご紹介いただけますか?
「若者が声を届け、その声が響く社会をつくる。」というステートメントを掲げて活動しています。メンバーは大学生と社会人を中心に、U30(29歳以下)世代が5~60人くらい集まるボランタリーなプラットフォームです。
目的は、若者世代の政治参加を促進すること。主な活動はInstagramの運営で、「知って、スタンスを持って、行動する」という目標を掲げながら、U30世代に向けて政治や社会の情報を発信しています。
わかりやすくてポップな形で伝えることで、選挙のときにスタンスを持つきっかけになったり、行動を起こす一歩になればいいなと思っています。Instagramの運営には力を入れていて、今ではフォロワーが11万人を超えています。
NO YOUTH NO JAPAN Instagram:https://www.instagram.com/noyouth_nojapan/
また、アドボカシー活動の一環で、昨年度から立候補年齢の引き下げを目指すプロジェクトも進めています。議会によって違いますが、今の日本では政治家に立候補できる年齢が25歳や30歳と定められていて、選挙権を持てる18歳より7歳から12歳も高いんです。
選挙には行けるのに議会で直接発言できない、若い人が自分たちの声を届けられないということです。これって完全な参政権と言えるのかなと疑問を持っていて、若者の声が本当に響く社会をつくるためには、社会制度の改革も必要だと思っています。
今は公共訴訟という形で、弁護団や原告の方々と一緒に活動しています。若者の参政権の尊重や、「若者は社会経験がないから立候補は早い」といった若者差別の解消を求めて裁判をしています。
他にもいろいろやっていて、例えば選挙管理委員会と協力して、投票済証のデザインを手がけたり、中高生向けの出張授業に月1回くらい行って、NO YOUTH NO JAPANの活動や選挙について話したりしています。最近は日本総研さんというシンクタンクとコラボして若者に関する調査事業も行っています。
2023年には、約5000人の投票行動を調査して、投票率が低い理由や政治に関心がないと言われる背景をデータで明らかにする取り組みをしました。
活動内容はこれらの「メディア」「アドボカシー」「シンクタンク」という3つの軸で展開しています。
ーーコミュニティを運営する上で、1番大切にしていることは何ですか?
NO YOUTH NO JAPANは若者団体であり、ボランタリーで運営しています。会社ではないですし、仕事として関わっている人もほとんどいないので、私たちが大切にしているのは「ワクワクしなくちゃ始まらない」という価値観です。
メンバーは社会への関心が高い人が多いので、活動の出発点は社会への不安や不満だと思われがちですが、実はそうではなくて、多くのメンバーが「自分が生きたい社会を作る」というプロセスそのものを楽しんでいるんですよね。
例えば、コミュニティを通じて自分と同じような思いを持つ若者と出会ったり、社会に対して何かを伝えたり、変えたりする過程を楽しんでいる。そんな風に、「ワクワクすること」を大事にしながら取り組むことが、活動を続ける上でのモチベーションになっています。
ーーコミュニティを一言で表すと?
「生きたい社会は自分たちで作るワクワク集団」です。「ワクワク集団」という言葉は、コミュニティ内でよく出るフレーズで、「生きたい社会を自分たちで作る」という考え方もカルチャーとして根付いています。
「ワクワクしなくちゃ始まらない」という価値観を共有しているからこそ、「これやりたくない?」というアイデアからいろいろなプロジェクトが生まれます。
例えば、立候補年齢引き下げプロジェクトも、完全な参政権を目指す必要性はもちろんあるけれど、「公共訴訟ってすごくない?」というワクワクした気持ちから始まったんです。なので、「生きたい社会は自分たちで作るワクワク集団」だと思っています。
ーーコミュニティ運営で直面した課題や困難があれば教えてください。
運営において、若者団体ならではの「人の入れ替わりの激しさ」や「引き継ぎの難しさ」が課題だと感じています。
NO YOUTH NO JAPANはこの夏で5周年を迎え、もうすぐ6年目に突入しますが、若者団体としては長く続いている方だと思います。実際、周りの若者団体やサークルは、次に引き継ぐ人がいなくなって活動を終了してしまうケースも多いです。こうした課題は若者団体全体が抱える問題だと感じています。
そこで、私たちは昨年の春から制度を新しくしました。具体的には、2年間の任期でリーダーシップを取るメンバーを選挙で選ぶ仕組みを導入し、代表も1人ではなく共同代表制を取り入れました。運営のリーダーシップを次世代に渡す方法や、個々の成長と団体の成長を両立する仕組みを模索しながら、長期的な視点を大事にしています。
もう1つの課題は、外部から「若者を代表する団体」と見なされることです。インタビューなどでも「Z世代としてどう思いますか?」や「今の若者はどう考えていますか?」といった質問をよくされます。でも、私たちは「NO YOUTH NO JAPANの声=若者全体の声」と捉えられることに慎重でありたいと考えています。
その理由は、私たちのメンバーには政治や社会問題に関心が高い人が多く、都市部在住でインターネット環境にアクセスしやすい、学校に通っている若者が多いという属性の偏りがあるからです。一方で、生活に精一杯で社会や政治に声を上げる余裕がない若者もいます。こうした若者たちの声が見えにくくなることを避けるため、私たちは「自分たちの肌感覚を過信しない」ことを常に意識しています。
ーーこれからコミュニティをどのように発展させていきたいですか?
「若者の声が響く社会」を実現するためには、若者が発信するだけではなく、社会側が若者を主体として受け止め、共に変わっていくことが大切だと思っています。私自身は、そんな社会を目指して、立候補年齢の引き下げに取り組んでいます。
ただ、立候補年齢を18歳に引き下げるだけでは十分ではないと思っています。例えば、議会によっては300万円もの供託金が必要だったり、18歳未満の選挙運動が法律で禁止されていたりと、現実的に若者が立候補して当選するには多くのハードルがあります。こういった制度の壁も一緒に取り払わないと、本当の意味で「若者が社会を変える」ことにはつながらないと思っています。
また、若者が社会にもっと関わるためには、選挙や政治についての基本的な情報や教育がとても大事だと思います。「議員って何をしているの?」「どうやって立候補するの?」といったことを知る機会がまだまだ少ないと感じています。
次世代を担うのは若者だと言うなら、若者が自分たちの言葉で話し、自分たちの体で動ける環境を整えることもすごく大事だと思っています。立候補年齢の引き下げが達成されて、18歳から政治家になれる日本社会になったとしても、そこに付随する問題はたくさんあります。そういう制度面にもアプローチできるNO YOUTH NO JAPANでありたいと思っています。
ーー最後に、今の若い世代に伝えたいことはありますか?
何か困っていることがあるとき、その問題の背景を少し深掘りしてみてほしいと思っています。例えば、「結婚しなさい」「化粧しなさい」と言われることには、昔からの偏見や差別が根底にあるかもしれません。また、「今年は暑くて外に出られない」と嘆くだけでなく、その背景には気候変動という地球規模の問題があるかもしれません。
こうした問題を掘り下げていくと、どこかで必ず政治とつながっていることに気づくはずです。政治とのつながりが見えたとき、選挙という手段が「自分の意思表示をして社会を変える」行動になると分かると思います。「なんでこうなんだろう?」と感じたとき、それを少しだけ調べてみてください。問題の背景や政治とのつながりを知ることで、自分にできることも見えてくると思います。そうすると、きっと選挙にも行きたくなるはずです。深掘りして知ることを意識してみると、楽しい発見があるんじゃないかなと思います。
ーー沼子さん、ありがとうございました!
NO YOUTH NO JAPAN
ピーティックスページ:https://peatix.com/group/11666081
ウェブサイト:http://noyouthnojapan.org/
Instagram:https://www.instagram.com/noyouth_nojapan/