ビジネスをファンと共に育てよう 〜アンバサダーマーケティングの新たな可能性〜 ゲスト:株式会社にんべん 経営企画部 執行役員部長 町田 忠男氏 [Marketing Terrace vol.8 イベントレポート]
イベントやセミナー、コミュニティを中心としたマーケティングが新たな潮流として注目を集める中、イベント・コミュニティサービスである「ピーティックス」は、マーケティング業界のプロフェッショナルが集い、現代の激動するマーケティング業界における課題に対する知見や戦略を共有するイベントシリーズ「Peatix Marketing Terrace (ピーティックス マーケティングテラス)」を定期開催しています。
Vol.8のゲストは、株式会社にんべんの経営企画部 執行役員部長、町田 忠男(まちだ ただお)氏。
にんべんの「だしアンバサダー」プロジェクトがどのようにして発足したのか、インフルエンサーマーケティングとは異なるアンバサダーマーケティングのアプローチ、さらにアンバサダーとの「共創」を通して発見した、コミュニティづくりのポイントをお話しいただきました。
■ 開催日:2024/11/26 (火) 19:00 - 20:00
■ 登壇者:
町田 忠男氏 [ 株式会社にんべん 経営企画部 執行役員部長 ]
研究開発から製造管理を経て2010年より企画マーケティング担当。2021年より現職。広報宣伝・ECを管掌。SNSやアンバサダー施策など、かつお節やだしを楽しむコミュニケーションを通した生活者のハピネスに向き合いながらエンゲージメント向上を目指している。開発時代に設計、企画マーケでパッケージリニューアルを担当した「つゆの素ゴールド」シリーズが個人的イチ推し。
ピーティックス藤田(以下 藤田):
アンバサダーの方たちは、具体的にはどんなことをやってらっしゃるんですか?
株式会社にんべん町田さん(以下 町田さん):
最近の大きな活動でいうと、去年の秋にアンバサダーと共同開発の鍋つゆをローンチしました。営業部長の「だしアンバサダーの皆さんと一緒に作りたい」という声をきっかけに、本格的に進めることになりました。
まず、どんな鍋が食べたいかというアンケート調査から始めて、その結果をもとにプランをいくつか提案。社内でディスカッションした後、再びアンバサダーに投げ返して意見をいただく形で進めました。
パッケージデザインも同様で、案を作ってアンケートを取り、フィードバックをもとにブラッシュアップしました。味を決める段階では、実際にファンミーティングを開催して「どんな味にしたいか」と直接意見を募り、会社に来ていただいて試食会も行いました。開発チームと一緒に「ああでもない、こうでもない」と議論を重ね、最終的な味を決めていったんです。
アンバサダーの方々には、まさにものづくりを一緒に楽しんでもらえたと思います。やっぱりこういう体験って貴重なので、参加された方々の満足度は非常に高いですね。
町田さん:
アンバサダープロジェクトで一番鍵になるのは、社内の理解だと思います。私たちが最初に取り組みを始めたとき、社内では「この人たち何をしているんだろう」という声もありました。正直、私自身も最初はそういう目で見ていました。でも、それではいけないと感じて、アンバサダー活用を通じて得られるメリットをしっかり社内に伝えていくことにしたんです。
最初のきっかけは、「ポーションだし」という商品を開発したときです。その際、アンバサダーの方を対象にグループインタビューを行い、この商品の可能性を探りました。そこで手ごたえを感じて、先ほどお話しした鍋つゆの共同開発プロジェクトにつながりました。
その中で、例えばファンミーティングに営業部が参加し、アンバサダーの方々と直接交流してもらう機会を設けました。「消費者の生の声を聞くと、こんなことがわかるんだ」という新たな気づきが生まれ、アンバサダーの意見やアイデアを営業活動に活かす流れができてきました。
アンバサダープロジェクトはどこかの部署だけがやっている活動ではなく、会社全体の事業活動の一部として位置づけていくことが大切だと思っています。
藤田:社外向けの活動と思われがちなアンバサダー活動ですが、社内での浸透も重要だということですね。
藤田:
参加者の方から質問をいただきました。アンバサダーマーケティングにおけるKPIはどのように設定されているのでしょうか?
町田さん:
まず一つの指標として「登録者数」があります。ただ、登録者数は増やそうと思えば簡単に増やせるものなんです。名前だけ登録してもらえれば数字は上がるので、水増しもできてしまいます。もちろん意味のある指標ではありますが、それだけでは足りないと思っています。
そこで私たちは「購買貢献推計値」という指標を設定しています。これは、SNSのAPI連携を活用して、アンバサダーの皆さんの情報発信がどれくらいリーチしているかを測り、そのリーチ数を基に購買転換率を計算しています。食品カテゴリーの場合、このくらいのリーチでこのくらい購買に結びつく、というデータをパートナー企業から提供していただいています。
さらに、私たちが持っている購買データ、例えば商品ごとの平均購入単価や月間購入金額を掛け合わせて、リーチ数×転換率×単価という形で「購買貢献推計値」を算出しています。この数値は、アンバサダー事業がどれだけ売上に寄与したかを示す具体的な指標になります。営業と同じ目線の数字を掲げることによって、 事業部門のメンバーにも分かりやすい数値として見てもらえるようになりました。
藤田:
インフルエンサーとアンバサダーは混同されがちですが、2つの違いについて町田さんのお考えをお聞かせいただけますか?
町田さん:
私たちが取り組むアンバサダー活動は、インフルエンサーとは全く異なるアプローチだと考えています。従来のマーケティングでは、まずユーザーリサーチを行い、そのデータを基に商品を開発します。その後、メディアやインフルエンサーを通じて商品を広め、消費者に届けるという流れが一般的です。インフルエンサーは、企業が作った商品の良さを伝え、影響力を活用して拡散してもらう役割を担っています。
ただ、私たちはそのスタイルに違和感を感じていました。消費者の行動データを勝手に収集し、それに基づいて一方的に商品を提案する方法では、相手の本当の気持ちやニーズを捉えられていないのではないかと考えたのです。
アンバサダーは、インフルエンサーのように商品を広める存在ではなく、私たちと同じ目線に立つ「仲間」のような存在です。商品開発の段階から一緒に関わり、「これ、どう思いますか?」と意見を交わしながら価値を発見していくコミュニケーションを大切にしています。
例えば、「この商品、面白いね」「これ好き!」といったリアクションが返ってくることで、私たちもその商品の価値を再発見できます。この共有された価値を元に、私たちは商品を世の中に送り出していきます。一方で、アンバサダーの方々も個人の視点でSNSに発信したり、口コミを書いてくれたりと、自発的な行動が広がっていきます。
企業とアンバサダーが一緒に発見した価値が広がることで、メディアもより注目し、ノンユーザーやライトユーザーにも届きやすくなります。情報が届きにくい時代において、こうしたアプローチが壁を乗り越え、より多くの人に商品を伝える方法だと考えています。
ピーティックス西川(以下 西川):
インフルエンサーとアンバサダーとでは、距離感が全然違うなという印象を受けましたが、アンバサダーの方との距離を縮める工夫としてはどんなことをされていますか?
町田さん:
実は、意識的に距離を縮めようと工夫しているわけではないんです。まず、アンバサダーの概念自体を「好きなことで集まるグループ」として捉えています。
例えば、私たちは「にんべん だしアンバサダー」と呼んでいますが、必ずしもにんべんの商品を使っている人に限定しているわけではありません。「鰹節が好き」「出汁に興味がある」といった理由で集まる方も多いんです。にんべんのユーザーでなくても構いませんし、結果的に商品を使ってくれるようになれば嬉しい、というくらいのスタンスですね。
西川:
確かに、社名や商品名が前面に出ると、営業的な印象を持たれてコミュニティに入りづらくなることもありますよね。
町田さん:
そうですね。コミュニティに入るための条件や義務感もできる限りなくしています。「これをしなければいけない」というルールを作るとしんどくなってしまうので、できる範囲で参加してもらえれば十分です。「これは遊びなんですよ」というくらいの軽さを保つことが大切だと思っています。
「Peatix Marketing Terrace」は、マーケティング業界のプロフェッショナルが集い、現代の激動するマーケティング業界における課題に対する知見や戦略を共有するイベントシリーズです。マーケティング業界に携わる皆様が連携し、新たなアイディアや手法を共有・発展させる場を提供します。
今後のイベント情報は、こちらのグループページでお知らせしていきますので、ぜひフォローをお願いいたします。
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