多様な性を知ろう。みんなが自分らしくいられるコミュニティの作り方|コミュニティテラスvol.3 イベントレポート
ピーティックス ( Peatix ) のイベントシリーズ「コミュニティテラス」は、イベントやコミュニティの主催者・関係者が交流できる場所づくりを目指しています。
コミュニティテラスvol.3のテーマは「LGBTQ+」。東京と大阪をつなぎ、初のオンライン開催を行いました。ゲストはtomoni.さんとポリーラウンジさん。性的マイノリティといわれる方々の参加が多い二つのコミュニティのトークを通じて、誰もが安心して参加できる場づくりはどんな属性の人にとっても大切なことであると実感できました。
【ゲストプロフィール】
tomoni. 宝本いつみさん
1989年生まれ。大阪府出身・在住。中学生のころから「どうしたら世界は平和になるのか」という問いを持ちつつ、大学時代は途上国でのボランティア活動に参加。周囲に生きづらさを抱える友人が多くいたことから、人の内面や環境との相互影響に関心が向く。2018年度よりスクールソーシャルワーカーとして活動。同時に、人間の意識やつながりの創出について学び、「みんなと一緒に」「自分を生きること」を探求中。内側の変容と外側の変革を両方していきたい。対話の場づくりや自分のマイノリティ性を活かした多様な性の講座も行なっている。人の自然体を写真に撮ることが好き。
tomoni. 吉川ヒロさん
1989年生まれ。大阪府在住。 4歳頃に「からだと自分の性別が違うようだ」と気づき、人と違う自分を意識し始める。学生時代のマレーシア植林ワークキャンプやアメリカでの国際会議などを経て、生まれや性別、国籍、経済状況などの様々な違いが「差」になることに疑問を持つ。違いが豊かさとなり、自分と相手の”らしさ”の尊重が両立する世界の作り方を、社会と個人の両面から探求を続ける。 20歳でトランスジェンダー男性/パンセクシュアルであることをカミングアウト。同時期から教育現場での多様な性を切り口とした人権講演や、LGBTQ+や教育関連の相談業務に関わる。 魂を揺さぶり自分らしさを呼び醒ます講演家として活動中。
▶tomoni. ピーティックスグループページ https://tomoni.peatix.com/
▶PrideMonth2024 コミュニティインタビュー 自分の内側の感情も、少数派の声も、「なにひとつおいていかない」
ポリーラウンジ きのコさん
旅する物書き、場づくり屋。ポリアモリー当事者として、恋愛・セックス・パートナーシップ・コミュニケーション等をテーマに活動している。クワロマンティックでジェンダークィアでもある。子無しでバツイチ、自称ビッチフェミニスト。著書に『わたし、恋人が2人います。〜ポリアモリーという生き方〜』。
ポリーラウンジ 梨谷美帆さん
ポリーラウンジ幹事。臨床心理士/公認心理師。精神科臨床を経てセクシュアル・マイノリティ支援に携わる。多様なひとの「生きづらい」を、もっと楽に!をめざしてカウンセリング・ラボSORAを設立。自由を愛するカウンセリング屋さん。NPO法人QWRC理事。
▶ポリーラウンジ ピーティックスグループページ https://polylounge.peatix.com/
▶PrideMonth2024 コミュニティインタビュー 愛の形はひとつじゃない。合意の上で複数人で交際する「ポリアモリー」という関係性
【ポリアモリーってなに?】
クロストークに入る前に、ポリーラウンジの梨谷さんが、誤解されやすい「ポリアモリー」についての説明をしてくれました。
ポリーラウンジ 梨谷美帆さん(以下、梨谷): ポリアモリーとは、関係者の合意に基づき複数のパートナーシップを営むライフスタイルです。「ポリアモリーはLGBTQなの?」とよく聞かれますが、少数者としての偏見に晒されているという意味ではポリアモリーも同じ。いわゆるクィアという形で連帯していこうと、日本でも海外でも取り組んでいます。
梨谷: 同じ「しこう」でも「嗜好」と「指向」と「志向」では意味が違います。簡単な説明ですが、「嗜好」は個人的な好みで、レズビアンやゲイなどの性的「指向」は自分の向く方向性。「志向」は内心に抱く思いです。
ポリアモリーを実践していることは、性的「指向」ではなく、目に見えている「関係様式」。複数の人と付き合いたいと思っているような目には見えない考えは「関係指向」です。なので、関係様式は一対一(モノガミー)でも関係指向では複数愛を望んでいるとか、関係指向は一対一なのにポリアモリーを実践しているとか。かなり幅広い関係性の人たちがいると言えます。
ポリーラウンジ幹事の小島雄一郎さんが「結婚している」からと言って「1対1の恋愛を望んでいる」とは限らない。パワポで考える関係様式と、関係指向の話。というコラムを書いているので、ぜひ参考にしてください。
【質疑応答】
何かのマジョリティであっても、別の部分ではマイノリティなこともあるはず。お互いの違いを批判せずに対話を重ね、それぞれの多様さを受け入れることの大切さについて、お話をたくさん聞くことができました。
Q: tomoni.とポリーラウンジの参加者は、どういうモチベーションで参加していますか。
tomoni. 吉川ヒロさん(以下、ヒロ): すごく忙しかったり時間がない中でも、ここに来ると仲間とゆっくり話ができたりして、自分のために時間を使っている感じがするという声がありますね。
梨谷: 参加者の方たちは「ここにしかない!」みたいな気持ちで来てくれます。場の選択肢が少なくて申し訳ないんですけど、細々とでも続けることにポリーラウンジの意味があるのかな。ポリアモリーっていう言葉に触れたり、当事者に会うことについて、ポリランは最初のゲート的な役割を担っているコミュニティかなと思います。
ポリーラウンジ きのコさん(以下、きのコ): みんないろんなところで友達とかに恋愛相談はしてるんだろうけど、それに対して「ああしろ、こうしろ」「あれはするな、これはするな」と言われてしまうマイノリティって多いみたいで。否定せずただただ聞いてくれる空間って、実はあんまり無いのかなって。
梨谷: お説教されずに「好きな人がたくさんいる」とか話せる場所が本当に無いんですよね。
きのコ: 自分と違う考えを「そうなんだ、私とは違うね。おもろいね」って言ってもらえる空間ってなかなか無いんでしょうね。ポリランは否定せずに受け入れることに価値をおいているから、そこが参加のモチベーションになっているのかもしれないと思ったりしますね。
tomoni. 宝本いつみさん(いつみ): 「ここにしかない」って、すごい重みのある言葉だなと思いました……っていう感想を伝えたくなりました(笑)。tomoni.にとポリーラウンジさんの関わりはこれが初めてなんです。
ヒロ: 光栄です、ほんとに。
きのコ: ありがとうございます。でも、「ここにしかない」ではいけないんだよなと思いつつ。もっといろんなところにできてほしいですよね。
Q: 「間違ったことを言って当事者を傷つけるんじゃないか」と考えてしまうアライは多いと思います。当事者ではない人が参加していいのか疑問があります。
梨谷: ポリアモリーに関しては、ポリアモリーを実践しなくても、恋愛とかパートナーシップの当事者であることがほとんどなので、結局はみなさんが当事者として話してくれます。そういう意味で、LGBTQのアライとポリアモリーを取り巻く人は、ちょっと違うと感じることがありますね。
きのコ: とはいえ、完全にモノガミーを志向する人が参加することもありますよ。別に否定しないし、逆に「一人しか好きにならないってどんな感じ?」みたいにワクワクして聞いちゃう(笑)。
ーー 恋愛はみんなが当事者になるということですもんね。
きのコ: ポリアモリーな志向性がない人も来やすい場でありたいし、そういう人が来てくれるとより多様性を感じられる。多様性がある場って主催する難しさはあるんですけども、「いろんな人がいておもしろいね」みたいな気持ちで帰れるようにしたい。
ヒロ: マジョリティ側は「傷つけるんじゃないか」みたいなことだったり、緊張感を持って体験していくところはあるし、セクシャリティ以外のところでマイノリティ性を持っていたりしますよね。ぼくらは、その「あるもの」を積極的に「あるもの」にしていくワークショップの方法を取っていたりします。生きやすさ/生きにくさも違いがあるから、違いを明らかにした上で、深く話してつながっていく。でも、それってめちゃくちゃ難しいので、葛藤解決のファシリテーターに入ってもらって、「そういう場ですよ」という設定した上で場を開いたりもします。
Q: 本名と活動ネームは、どのように使い分けているのでしょうか。
きのコ: 私は小学生の頃から親の影響で初期のビートルズが好きで、マッシュルームカットにしてたらあだ名が「キノコちゃん」になって、気に入ってそのまま使い続けてますね(笑)。ポリアモリーもLGBTQも関係ない趣味のコミュニティでも、きのコを名乗っています。
梨谷: 小学生からやったんや(笑)。
きのコ: 逆に活動名を増やさないことにはこだわってるかなあ。ただ、新聞はなぜか本名で取材をしたがるので、新聞だけは本名で載ってることが多いかも(笑)。
梨谷: 私は普段、ポリアモリーとLGBTQフレンドリーな人たちに向けてカウンセリングをしているので、本名を使うようにしています。でも自分がいち当事者として参加しているときは、匿名性を持たせたくて活動名を使うこともありますね。中学生のときV系バンドが好きで、ファン同士で呼び合っていた名前をそのまま使ってます(笑)。きのコさんのあだ名と同じで、長く使ってると馴染みがありますよね。
きのコ: いまはフリーランスだけど、会社員をしながらポリーラウンジをやっていた頃はあんまりオープンにできてなかったから、「本名の自分はライスワークとしてお金を稼ぐ存在、きのコはライフワークとして自由に好きなことをやる存在」みたいに、二面性を持たせていたのを思い出しました。本名の自分はきのコのスポンサー、みたいな位置づけ(笑)。
ヒロ: 戸籍の名前とは異なるけれど、ぼくも概ね吉川ヒロで生きているので、全く違う名前に変えたことはないですね。でも、いろんな名前を使うのは珍しいことじゃないんじゃないかと思って。SNSとか、本名でやってる人は少ないですよね。
きのコ: 自己開示の範囲を自分で決めていいんですよっていうメッセージとして、こちらが本名を名乗らないことにも意義はあるのかも。ポリーラウンジでは、「本名でも匿名でも、今日呼ばれたい名前を名乗ってください」と言うようにしています。匿名でもいいことにホッとする人もいますからね。
Q: みんなが自分らしく入れる場、安心安全なコミュニティを作るために意識されてることがあれば教えてください。
梨谷: ポリーラウンジにはグラウンドルールがあって、イベントの告知に必ず入れています。
ヒロ: 全国各地にいる幹事さんは、グラウンドルールのみを共有して開催されているそうですね。すごく大事に作られたんでしょうし、何を参考にしたのか気になりました。
梨谷: 以前は幹事ごとのグラウンドルールがあったんですけど、共通理念ぐらいは揃えようっていうことで、各幹事のルールを統合して作りました。
きのコ: LGBTQ系の自助グループとかピアサポートによくあるルールを参考にしましたが、私がこだわったのは哲学対話の対話手法で、「否定しない」とか「決めつけない」とか、そういうルールを提案しました。ここまで十数年かけて練り上げられて、今やっと固まってきてるのかな。
梨谷: グラウンドルール以外だと、幹事と誰かの二人で運営するとか、トラブルがあったときは地方開催でも運営本体に言ってねという案内をするとか。恋愛やパートナーシップについて話し合う場だから、誰かと出会いたい人も恋人が欲しい人も来るので、トラブルが全く無いとは言えないんですけど、大きな問題は無いかなと思います。
ヒロ: ポリランさんは本当に長く続いているし関係者も多いので、ルールがある程度しっかりしてるほうが全体の安全を守りやすいのかなと感じました。tomoni.はまだ3年目ですし、ぼくらと面識がある人たちを中心に3人〜4人の小規模で集まる会が多いんです。だからそんなにガッチリと決めてはいなくて、「答えをパスしてもいい」「否定しない」ぐらいですね。
ーーしっかりとルールを決めつつ、気持ちよく守ってもらうコツやバランスはどのように調整されていますか。
きのコ: ルールがあると堅苦しいとか窮屈という感想を持つ参加者がいるのは、経験としてわかります。でもルールによって話しやすい解放感とか安心感を持つ人のほうがすごく多いんです。制限したり押し込めたりするルールではなくて、自由になるためのルール。安心で安全にするためのルールであるというところは、気を使って作ってるつもりですね。
Q: 子どもたちにLGBTQ+について伝えていくときに、大人との違いはありますか。
ヒロ: 子ども向けの方が、自己理解だったり自分を肯定していけるメッセージを濃く出しているかもしれないですね。思春期は人の目が気になったり自信が持てないことってよくあると思うんですけど、自分の感じてることや思ってることは自由で、自分の好きなことを好きでいていいんだということをハッキリ伝えるようにしています。
ーー大人に伝えているポイントはありますか。
ヒロ: 学校現場で子どものそばにいる大人はやっぱり特権性があるので、それを自覚的に使ってほしい。子どもたちの自由さを守ることに使える力を持っていることを知ってほしいし、その力をいい方向に使ってくださいと熱心に伝えているんじゃないかなとは思います。
【コミュニティテラスのグラウンドルール】
参加者が安全に、そして自由になるために、ピーティックスでも初めてグラウンドルールを作成しました。今後のイベントにも、グラウンドルールを活かしていきたいと考えています。
【終了後のアンケート】
満足度の高いご回答をたくさんいただきました。ご回答ありがとうございました。
「グランドルールが提示されたので、どんな人たちがいるかわからない中でも安心して参加できた」
「ポリアモリーを誤解していました。こういうことかな?と、勝手な解釈していたことに気づけて本当に良かった」
「ゲストそれぞれから語られた言葉が、場を作っている実践者ならではの濁りのない響きを持って伝わりました」
「地方在住なので、何回かに1回は今回のようにオンライン開催だとうれしいです」
今回のお話を通じて、性的マイノリティやポリアモリーといったライフスタイルの方々が安心して参加できるコミュニティの重要性や、そのコミュニティが「ここしかない」場所として、参加者にとってどれだけ大切であるかが伝わってきました。
印象的だったのは、それぞれの生き方や考え方を否定されることなく受け入れられる場所の価値です。なにげない日常会話でも、否定が多い場面はありますよね。どこにいても、他者の思いをまずそのまま受け入れる姿勢を大切にしたいと感じました。
【コミュニティテラスvol.3 概要】
日程 2024年7月30日(火)
テーマ 「LGBTQ+」
ゲスト tomoni. 宝本いつみさん/吉川ヒロさん ポリーラウンジ きのコさん/梨谷美帆さん
次回のコミュニティテラスは、10月開催です。登壇者、参加者の方々との交流は、その場でしか味わえない醍醐味です。機会がありましたら、ぜひコミュニティテラスにご参加ください。お待ちしております。
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