意見を交わし合う「セーフスペース」ーープラン・ユースグループの居場所づくり [U30コミュニティインタビュー #2]
SDGs、ジェンダー平等、政治参加――。いま、さまざまな社会課題に関心を持ち、行動を起こす若者たちが注目されています。若い世代が作り出すコミュニティは、それぞれのテーマに真剣に向き合い、多くの人を巻き込みながら活動を広げています。
イベント・コミュニティプラットフォームであるピーティックスでも、政治や環境問題、ジェンダーなどをテーマに若者たちが数多くのイベントを開催し、新たなつながりを生み出しています。
今回は、そんな若者コミュニティの活動や、それを支える思いについてお話を伺いました。
お話を伺ったのは、プラン・ユースグループのいどうさん、もえさん。
プラン・ユースグループは、国際的なNGOプラン・インターナショナルの日本事務局に属するユース主体のグループです。高校生から社会人まで幅広い世代のメンバーが所属し、年間を通してさまざまな活動をされています。
日本国内の同世代が直面する課題を発信し、共感の輪を広げることを目指すとともに、組織の意思決定プロセスに参加。ユース・エンゲージメントを促進し、若者の声が社会に反映される仕組みづくりを目指しています。
ーーいどうさん、もえさん、本日はどうぞよろしくお願いいたします!早速ですが、プラン・ユースグループの活動内容をご紹介いただけますか?
いどうさん:
プラン・ユースグループは、国際NGOプラン・インターナショナルの日本事務局に属するユース主体のグループです。プラン・インターナショナルはイギリスに本部を置き、世界中の誰もが平等な社会の実現を目指して活動しています。その中で、ユースグループは若者とともに課題を解決していくことを重視し、活動しています。日本を含め、世界中の各事務局にユースグループが存在しており、日本では現在約20名のメンバーが活動しています。
もえさん:
ユースグループは大きく2つに分かれています。1つはアドバイザリーチームで、もう1つがアドボカシーチームです。
アドバイザリーチームでは、プラン・インターナショナルの支援事業に対して、ユース目線からアドバイザリー活動を行います。例えば、理事会や役員定例会といった組織の意思決定の場にユースが参加し意見を述べたり、プラン・インターナショナルの職員から依頼を受けてフィードバックを提供することもあります。
アドボカシーチームでは、日本国内のジェンダー問題に焦点を当てた活動を行っていて、主な取り組みが3つあります。
1つ目は、InstagramなどのSNSを活用した情報発信です。
2つ目は、オンラインイベントの開催で、講師を招いた勉強会を実施しています。
3つ目は、ジェンダーに関するアンケート調査を実施し、その結果を分析して政策提言を行う活動です。提案内容は省庁に届けています。
ーーコミュニティを運営する上で、一番大切にしていることは何ですか?
もえさん:
プラン・インターナショナルの職員の方が、それぞれアドバイザリーチームやアドボカシーチームに1人ずつついてくださり、一緒に活動しています。職員の方々は、活動当初から私たちの「やりたいこと」や「考え」を大切にしてくれているので、「ユースの意見を尊重すること」は、プラン・インターナショナルやユースグループ全体としても大切にされていると実感しています。
いどうさん:
コミュニティ運営においては、意識していることが大きく2つあります。1つは内部での活動、もう1つは外部への発信です。
内部の活動では、ユースのメンバーから提案された内容を事務局とすり合わせて形にしていきます。その際、新しく加わったメンバーや久しぶりに活動に参加したメンバーが入りやすいように、キャッチアップの場を設けたり、積極的に意見を聞くことを意識しています。チーム編成が変化する中でも、誰もが活動に溶け込みやすい環境づくりを心がけています。
一方、外部への発信においては、主にジェンダーの問題をユース世代にどう伝えるかを重視しています。日常的な課題に関連付けたり、ターゲット世代に響く発信を心がけることで、私たちの活動をより多くの若者に届けたいと考えています。
ーーあなたのコミュニティを一言で表すと?
いどうさん:
「セーフスペース(安全な居場所)」だと思います。ジェンダーやセクシュアリティといったトピックについて、気まずさを感じずに話せる場所であり、気軽に意見を交わせる仲間がいる場だと感じています。
もえさん:
「居場所でありつつ、同じ問題に目を向けている仲間同士でさらに社会を変えていく」、そんなコミュニティだと思います。アドボカシー活動として目に見える成果を出すことは大切ですが、それだけではなく、メンバー自身にとっての居場所であることも同じくらい重要だと考えています。普段の生活では話しにくいことを気兼ねなく話せる場を求めて参加するメンバーも多いです。発信活動と意見交換の場が共存しているところが、ユースグループの特徴であり、魅力だと思います。
ーーコミュニティの活動やイベントが、メンバーや参加者にどのような影響を与えていると感じていますか?
もえさん:
私は去年までの3年間、イベントを担当していました。特に若い世代の集客には苦労することもありましたが、イベント後のアンケートでは「初めて知ることがあった」「ディスカッションの時間が新鮮だった」「同じように考える人と話せてよかった」といった声を多くいただきました。私たちのイベントの目的の一つは、知識を得る場や話し合いの場を提供することなので、それが参加者に届いていることを実感できたのは大きな学びでした。大きな変化を起こすことは難しいかもしれませんが、イベントを通じて個々の参加者に少しでも変化があったら嬉しいなと思っています。
いどうさん:
外部向けのイベントを企画したり、他のイベントに参加したりする中で、大きく2つのことを感じます。
1つは、ジェンダー問題に関して「まだこんなに多くの課題があるんだ」と気づかされることです。この新しい気づきはポジティブな面でもありますが、同時に「もっと活動を進めていかなければいけない」という危機感も感じます。普段の活動では内輪での議論に偏りがちですが、外部の視点に触れることで新たな視野が広がるのは大きいですね。
もう1つは、ジェンダーの問題に関心を持ち、「変えたい」と考えている人がたくさんいることに気づけることです。そうした方々と出会うことで、私たち自身がエンパワーされ、前向きに活動を続ける力をもらっています。
ーー今の若い世代に伝えたいことはありますか?
いどうさん:
「一般化しすぎない」ということですかね。
メディアは短い言葉でセンセーショナルに報道しがちですが、そういったキャッチーな部分だけでなく、物事の多面性に目を向けてみると、新しい視点が得られるのかなと思います。
もえさん:
私はユースグループの活動を通じて、社会課題には必ずどこかで自分とつながっている部分があると感じています。しかし、周りにはジェンダー問題を「自分とは関係ない」と思っている人が多いのが現実です。また、政治や選挙に関心がなく、投票に行かない人も少なくありません。それを見ると、この先どうなってしまうのだろうという不安を感じることがあります。
だからこそ、ユースグループのInstagramやイベントが、行動を起こす最初の一歩になれたら嬉しいと思っています。社会課題に対して少しでも「自分ごと」として捉えてもらえるきっかけになればいいなと思っています。
ーーコミュニティ運営で直面した課題や困難があれば教えてください。
もえさん:
私もいどうさんも、アドボカシーチームの統括を経験しており、その中で感じた課題の1つは、メンバーの多様性への対応です。年齢差があったり、オンライン活動が中心のため地方に住むメンバーもおり、直接会ったことのない人もいます。全員の意見を平等に聞きながら活動を進めるのは今でも難しいと感じています。
また、活動の優先順位も人それぞれで、学生や社会人として忙しい中、活動にどれだけ時間を割けるかはメンバーごとに異なります。その結果、リーダーに仕事が集中することもありますし、毎週ミーティングに参加する人と、時々しか参加できない人の差が出ることもあります。こうした点でバランスを取ることが課題ですね。ただ、メンバーの意識が高いことや、活動自体の満足度が高いおかげで、ここ数年で運営がかなり確立されてきたとも感じています。
いどうさん:
もえさんと同じく、活動量のバランスは課題だと感じていますが、それに加えてもう1つ、巻き込むことの難しさがあります。例えば、「何かやりたい」と思ってユースグループに参加してくれたメンバーがいても、その年のアドボカシーチームの活動テーマがその人の興味と必ずしも一致するわけではありません。そうした場合、どうすればそのメンバーを巻き込めるか、興味を持ってもらえるかを工夫する必要があります。この点については、試行錯誤しながら進めているところです。
ーーこれからコミュニティをどのように発展させていきたいですか?
もえさん:
ユースグループでは、原則として2年間の活動期間がありますが、メンバーの編成は年々変わっていきます。それでも、今の体制を維持しつつ、より良いコミュニティにしていきたいと考えています。
具体的には、SNSをさらに大きな規模に成長させたり、イベントや調査をより影響力のあるものにしていきたいです。また、メンバーにとっては、ユースグループが単なる活動の場を超えた「居場所」であってほしいとも思っています。卒業後もここでの出会いやつながりを大切にしてくれたり、学校やアルバイトとはまた違う場所としてメンバーの人生に残ってくれるコミュニティであれたら嬉しいですね。
いどうさん:
居場所としての役割もありつつ、ユースグループの知名度を上げていきたいという気持ちも切実です。母体であるプラン・インターナショナルにユースグループがあるのかと驚かれることが多いのが現状です。これからはジェンダー関連のイベントにも積極的に参加し、ネットワークを築きながら、ユースグループの活動をより多くの人に知ってもらえるようにしたいです。
ーーいどうさん、もえさん、ありがとうございました!
プラン・ユースグループ
ピーティックスページ:https://peatix.com/group/11592240
ウェブサイト:https://www.plan-international.jp/activity/advocacy/youth/
Instagram:https://www.instagram.com/youth_planjapan/
ピーティックスでさまざまなイベントやコミュニティを見つけよう!
ジェンダー / 国際協力 / 社会課題