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差がつくコンテンツマーケティング:ファンを引きつけるポイント ゲスト:株式会社メルカリ Social & Contentsチーム マネージャー 池田 早紀氏 [Marketing Terrace vol.7 イベントレポート]

イベントやセミナー、コミュニティを中心としたマーケティングが新たな潮流として注目を集める中、イベント・コミュニティサービスである「ピーティックス」は、マーケティング業界のプロフェッショナルが集い、現代の激動するマーケティング業界における課題に対する知見や戦略を共有するイベントシリーズ「Peatix Marketing Terrace (ピーティックス マーケティングテラス)」を定期開催しています。

Vol.7のゲストは、株式会社メルカリ Social & Contentsチーム マネージャーの池田 早紀(いけだ さき)氏。

池田氏が施策を推進した「名前のわからないもの展」、「超推し活展」、「メルカリで出会えるモノでつくった ウチの実家」などのユニークなイベント施策の裏話をはじめ、評価指標が難しい施策をなぜ実施するのか、そして結果をどう評価しているのか、お話を伺いました。

ピーティックスCMOの藤田も、メルカリ主催の2つのイベントに参加し、世代を問わず楽しめる内容や参加者の共感・つながりを生む工夫に心を動かされました。先日、藤田が日経COMEMOにて何故心が動いたのかなどについて記事を寄稿しましたので、よろしければお読みください。


■ 開催日:2024/10/30 (水) 19:00 - 20:00

■ 登壇者:
池田 早紀氏 [ 株式会社メルカリ Social & Contentsチーム マネージャー ]

大学卒業後、出版社、教育系ベンチャーを経て、2017年メルカリへ。
2人目の育休中にメルカリにハマり育休明けたらメルカリに入社していた。HRとして採用や育成に従事し、職種転換してマーケティングDivisionへ。現在は、公式SNS、コンテンツ、イベントなど、お客さまに近いタッチポイントの開発・企画・運営を行うSocial & Contentsチームのマネージャー。


ピーティックス西川(以下 西川):
まずは、今回のテーマでもある「コンテンツマーケティング」とは何かというところから、お話を伺いたいと思います。

株式会社メルカリ 池田さん(以下 池田さん):
私の解釈だと、コンテンツマーケティングというのは、企業が発信したいことを押し出すというより、お客さんにとって価値のある内容を提供するマーケティング活動だと思っています。その「価値」というのも、サービスの理解につながる価値もあれば、単純に面白いと感じてもらう価値もありますが、要はお客さん視点で作るものという解釈です。

シチュエーションとしては、見込み顧客に向けて発信することもあれば、既存顧客向けのCRMに利用することもあります。ターゲットによって、どんな内容が価値を持つのかという視点から構築するものだと考えています。

ピーティックス藤田 (以下 藤田):
実際に、見込み顧客なのか、既存顧客に対してさらに深くアプローチするのかによって、アプローチは全く異なるのでしょうか?

池田さん:
そうですね。特にメルカリの場合、まだ利用していない方もたくさんいれば、既存のお客さんもたくさんいます。未利用者に対しては、まずメルカリに関心を持ってもらえるように、どのように見せるかを考えます。既存のお客さんの場合は、例えば、1、2回使ったけれど半年利用していない人と、毎日3回アクセスしている人では、響く内容や価値も全く異なると思います。

なので、コンテンツマーケティングは本当に「誰に」「何をしてもらうために」という目的を明確にしないと、価値を発揮できません。私自身もその組み合わせがうまくマッチせず苦い経験をしてきましたが、アプローチは全然違うと感じますね。

藤田:
私が池田さんと最初にお会いしたのは、メルカリさんのイベントでした。メルカリさんのイベントは「エッジが効いていて、メルカリだからやるべきイベントをしている」という印象です。イベントマーケティングについてもお伺いできますか?

池田さん:
ちょうど今日、ACCのブランデッド・コミュニケーション部門でシルバー賞をいただいたイベントが「メルカリで出会えるモノで作った うちの実家」です。1年前にやったものですが、2003〜4年頃の一軒家を原宿に再現して、中に懐かしい家具を置いて、来場者に帰省体験をしてもらうという内容で、”擬似”お父さんとお母さんが「おかえり」と迎えてくれます。このイベントはかなりメディアにも取り上げられて、反響が大きかったです。

「名前のわからないもの展」は、今年の8月に開催したイベントです。メルカリには30億以上の商品が出品されており、本当になんでもあるんですが、一方で名前がわからないものは検索しにくいという課題があって。そこで、メルカリで売られている、名前はわからないけど皆さんの身近にあり役に立っているものを約240点展示しました。実は、「パーカーの紐の先についている玉みたいなものが欲しくても、名前がわからず探せない」というお客様の声を実際に聞いたことがあったので「名前がわからないもの」だけを集めたイベントをやりました。SNSでもめちゃめちゃバズっていましたね。

その次が「超推し活展」で、メルカリで見つかる昭和・平成・令和のアイドルやアニメの推し活アイテムを集めた展示です。ここでもSNSで投稿してもらうために、コスプレ体験の仕掛けも入れて、楽しんでいただきました。その後、渋谷の展示物をそのまま台湾に持ち込んで、「時空を超えた宝探しの旅」を開催しました。90年代から2000年代、2010年代の台湾人に人気の日本カルチャーを集めて、初の海外イベントとして開催しました。

池田さん:
イベント企画で大事にしているのは、「メルカリにしかできないこと」と「心が動くかどうか」の2つです。それなりに面白いものを展示するだけでもイベントは成立しますが、それを来場者が「自分ごと」に感じられるかを重視しています。この「自分ごと」というのが、企画において重要なキーワードですね。

メルカリの認知度は約95%、サービス理解度も70%近くに達していますが、それでも「自分が使うサービスだとは思っていない」人がいる。こちらが「メルカリです!」とアピールしても、興味を持ってもらえないんですよね。その人が心のどこかで抱えている欲求や懐かしさなどに触れない限り、見向きもしてもらえません。ですから、いかに「自分ごと」にしてもらうかが、イベントでの重要なポイントだと思っています。

藤田:
企画の尖らせ方に関しては、どういう風に考えていらっしゃるんですか?

池田さん:
まず考えるのは「この時期に何を伝えたいか」ということです。例えば「うちの実家」というイベントは、年末に向けて「かくれ資産」をテーマにしました。日本の家庭には隠れた資産があるというプレスリリースを、毎年11月頃に出しているんですが、この時期にメルカリが一番伝えたいのは「皆さんの家にも眠っている資産がある」ということです。

とはいえ、単に「かくれ資産」と言っても面白くないので、どうすれば来場者に「行ってみたい」と思ってもらえるか、そして来場して心が動くかを考えました。その中で、帰省のテーマに行き着きました。ちょうど昨年末はコロナが完全には収束していない時期で、久しぶりに帰省する方も多かった。そうした状況が、「帰省」というテーマを「自分ごと」として感じてもらえるきっかけになったと思います。

藤田:
事前に参加者の方から質問がありました。コンテンツマーケティングにおいて社内ではどう巻き込んでいらっしゃるのか、社内での理解をどう進めているのかについて伺えますか?

池田さん:
メルカリには社員が2000人ほどいて、コンテンツマーケティングやコミュニティマーケティングに対する理解度も社員や経営陣の間でばらつきがあります。この1年はかなり理解が進んだと感じていますが、実はその前の段階では、まったくと言っていいほど理解がなかったんです。昨年メルカリが10周年を迎え、ようやく「効果が測れなくても、必要なことはやろう」という空気が生まれました。

タイミングとしては、社内体制や会社の状況が変わる時に、こうした効果の見えづらい取り組みに挑戦できるチャンスが来るのではと思います。そのタイミングで成果を出す覚悟がある人がいて、しっかり成果をわかりやすく出し、その成果を社内で理解してもらうことが大事なんです。2000人全員に理解してもらうのは難しいので、キーパーソンを見極め、その人たちにイベント会場で実際のお客さんの反応を見てもらい、楽しんでもらう。そのうえで、楽しんでくれたのはあなた一人ではなく、他のお客さんも楽しんでくれた、という定量と定性のレポートを繰り返し共有する。これが社内の理解を得る方法だと感じています。

藤田:
それをずっと継続して、徐々に社内の理解を深めていくということですね。

池田さん:
そうですね。ただ、効果が見えにくい活動を続けていても、「本当に効果があるの?」と疑問視されるタイミングは必ず来ると思います。そういう時に備えて、定量的に示せるデータがないと「ではやめよう」という話にしかならないですよね。私たちは半年に1回、ブランド調査のような形でメルカリに対する認知やイメージについて調査をしています。利用者と未利用者の間でのイメージ差や、未利用者の中でもメルカリの情報を見聞きしている人とそうでない人の印象の違いなど、定点調査を行っているんです。そうすると、やはり見聞きしている頻度が高い人の方がメルカリにポジティブな印象を持っている傾向があるため、こうしたデータがあれば「やはり露出していた方がいい」と話せるわけです。

経営からの問いに対して、パーフェクトな定量データではないとしても、何のデータがないよりも、常に出せるデータを用意しておくことが非常に重要だと感じています。


「Peatix Marketing Terrace」は、マーケティング業界のプロフェッショナルが集い、現代の激動するマーケティング業界における課題に対する知見や戦略を共有するイベントシリーズです。マーケティング業界に携わる皆様が連携し、新たなアイディアや手法を共有・発展させる場を提供します。

今後のイベント情報は、こちらのグループページでお知らせしていきますので、ぜひフォローをお願いいたします。

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