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「自分は自分のままでいいんやな」ひとりでは難しくても、人とつながることで自分を肯定できる [PrideMonth2024 コミュニティインタビュー #1]

毎年6月は、LGBTQ+の権利について啓発を促すイベントやパレードが世界各地で行われる「プライド月間(Pride Month)」です。

イベント・コミュニティプラットフォームのピーティックスでも、LGBTQ+コミュニティによってさまざまなイベントが開催されています。

そこで、プライド月間を記念して、LGBTQ+当事者とその周囲の人々をサポートするコミュニティの主催者へインタビューを行いました。

今回ご紹介するのは、NPO法人QWRC(くぉーく)の共同代表・桂木祥子(かつらぎ さちこ)さん。

大阪を拠点に、LGBTQ+の人々が安心して集まり、相談できる場所を提供するQWRC。

2003年の設立以来、孤立しがちな当事者たちの居場所づくりをはじめ、障害福祉や企業・教育機関への研修など、さまざまな観点からサポートを続けられています。

ありのままの自分で人とつながり、自分を肯定できるようになる。そんなコミュニティを運営する桂木さんに、活動にかける想いやLGBTQ+コミュニティの意義を伺いました。

NPO法人QWRC共同代表 桂木祥子(かつらぎ さちこ)さん
2003年、大阪にてLGBTなど多様性と女性のためのセンターQWRC立ち上げに関わる。同時に精神科勤務10年の後、障がい児者の支援を行う。LGBTQセンターにて福祉施設を開設したのは日本初。精神保健福祉士。シングルマザー。自由人を愛する人。


ーー桂木さん、本日はどうぞよろしくお願いいたします!早速ですが、QWRCさんの活動内容をご紹介いただけますか?

QWRCはLGBTQ+の団体で、「居場所事業」「相談事業」「研修事業」の3つの事業をしています。 

居場所事業は、LGBTQ+当事者やその周囲の人々が孤立しやすいという問題を解決するために安心して集える場所を提供する事業です。当事者たちは自分の将来の姿を想像することが難しかったり、安心して過ごせる場所が少なかったりするので、みんなで集まって話せる場所が必要だと思い、始めました。

相談事業は、もともと対人援助職の経験を持つメンバーがいたので、その強みを活かして当事者とその周りの人が相談できる窓口を作っています。特に、大阪のプライドセンターの中に開設した福祉事業では、支援を必要とする人と福祉・医療施設をつなげたりなど、橋渡し的な役割も果たしています。障害とセクシュアリティの両方に対応できる相談場所はとても少ないので、遠方からいらっしゃる方も多いです。

研修事業は、もともとは人権教育の一環として大阪の学校でセクシャリティに関する研修を行っていたのが始まりです。LGBTQ+という言葉が広まるにつれ研修の依頼も増えてきたので、事業として行っています。最近では、企業のLGBTQ+相談窓口などからの依頼もあります。


ーーコミュニティを始められた背景やきっかけは何だったのでしょうか?

立ち上げたのは2003年です。当時はインターネットが普及していなかったこともあり、今よりも他の当事者たちと出会うことが難しい時代でした。
なかなか集まる場所もなかったので、公共の施設を借りてそのときだけ集まることはありましたが、 そうではなくて「いつもそこにある場所」が必要だと思っていました。
そこで、同じ想いを持っていた人たちと事務所を立ち上げ、居場所事業から始めました。


ーーかなり長く活動されているんですね。2003年というと「LGBTQ+」という言葉自体もあまり知られていなかったときですよね。

そうですね、日本にはまだなかったかもしれません。 
もちろん同性愛者やトランスジェンダーの人たちはそれ以前よりいましたが、言葉が知られてきたのは東京オリンピック(2020)前くらいだと思います。

今はLGBTQ+という言葉が広まりましたし、子どもからトランスジェンダーかもと言われてと相談にくる保護者の方もすごく増えました。親御さんに言いにくい、言えないという子どもや若者からの相談もありますが、保護者がLGBTQ+の団体に相談しよう、となるのは時代がだんだんと変わってきたからなのかなと感じています。


ーー社会が変化する中で、LGBTQ+コミュニティをとりまく環境はどのように変わっていったのですか?

最初の頃は「LGBTってなに?」というところから始まり、なぜわざわざNPOとして活動しないといけないのかなど、説明することがたくさんありました。
事務所を借りるにしても、何の団体なのかをオープンにするのがすごく大変でした。こちらの気持ちのハードルもありましたし、 説明してわかってもらえるのかという不安もありました。

今はLGBTQ+という言葉は知られてきてますが、それに対する攻撃もあります。
インターネットによって言葉や知識が広まるのは良い面もありますが、負の感情を加速してる部分もあったり、真実ではないことが広まりやすかったりもするので、大変な時代ではあります。ただそれよりも、一緒に現状を良くしていこうと思っている人たちと協力していきたいなと思っています。


ーーQWRCさんはLGBTQ+の方々のほかに、女性のサポートもされていますよね。そのきっかけは何だったのでしょうか。

「Queer & Women's Resource Center」の頭文字の略でQWRC(くぉーく)というのですが、女性が置かれている社会状況とLGBTQ+当事者が受けている差別には関連性があるのではないかと感じていて、女性を支援している団体ともつながりたいという想いがありました。

2003年の設立当時はLGBTQ+の団体も少なかったですが、活動する中で、シスジェンダー(生まれた時に振り分けられた性別と自分の思う性別が一致している人)の男性の活動だけでなく、トランスジェンダーやレズビアン、バイセクシュアル女性が自主的に発信する場が必要だと思ったことがきっかけでした。


ーーQWRCさんの活動によって、集まる人たちにどんな影響を与えていると感じていますか?

つながることで元気になる、というのはありますよね。
「自分は自分のままでいいんやな」と思うのって、ひとりではすごく難しい。人とつながることで肯定されて、次は自分が誰かに返していこうとなるのかなと思います。

ありのままの自分自身、本来の自分で人とつながることがすごく大切かなと思っていて。普段は隠したり押し殺したりして日常を送っている中で、自分が本来どうしたかったのかとか、自分がどんな人だったのかってわからなくなるけれど、自分のことを話せる場所・隠さなくてもいい場所にいることで、自分がおかしいわけじゃなかった、ひとりじゃなかったと自分を肯定できるようになるのがコミュニティの意義ですね。

私は女性と付き合うことが多かったので、自分が子供を持つというイメージが全然沸かなかったんですよね。でも、コミュニティでレズビアンカップルやシングルマザーが子どもを育てているのを見て「自分は子どもを育てたかったんやな」と自覚して、いま子どもを育てているので、コミュニティの力を実感しています。そのつながりがなかったら子どもを育てていないだろうなと思います。


ーーありのままの自分を肯定でき、サポートし合える。そんな場所を運営するにあたり、桂木さんが大切にされていることはなんですか?

一人ひとりを尊重することを一番大切にしています。
いないものとされてきたり、馬鹿にされてきたり、あからさまではなくても格差や偏見を日々感じているので、 「尊重される」ということが必要だと思っています。

人それぞれ本当にいろんな人生を歩んできているので、それに尊敬を示して、話していて楽しかったり、行くだけでも居心地が良かったり、 安心できる場を目指しています。


ーー最後に、6月のプライド月間にあたってLGBTQ+当事者やアライ(LGBTQ+を理解し、支援したいという考えを持つ人や団体)へメッセージをお願いできますか?

気軽な気持ちでコミュニティに参加してほしいなと思っています。
研修の受講者からの感想でよくあるのが、「友達からカミングアウトされたとしても、そのことについては触れてはいけないと思っていた」というもの。きっと「相手を傷つけたくない」という気持ちからだろうけど、もっと気軽に話せた方がいいですよね。 

友達同士で異性への恋愛の話をするのと同じように同性への恋愛の話をしたり、もし友人からトランスジェンダーだと打ち明けられたら言ってくれた理由を聞いてみたり、QWRCに来てもらったり、そういうちょっとしたつながりで社会全体が変わっていくのかなと思います。

私たちはすでに共に生きています。違いもあれば共通点もある。私はバイセクシュアルで母でもあり、猫好きだったり、食べることが好きだったり、人と違うことで大変なこともあります。そんな時、人に助けてもらったり、助けたり、お互いに支え合えればと思っています。

ーー桂木さん、ありがとうございました!

NPO法人 QWRC
ピーティックスページ:https://peatix.com/group/11613694 
ウェブサイト:https://qwrc.jimdofree.com/


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