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自分の内側の感情も、少数派の声も、「なにひとつおいていかない」[PrideMonth2024 コミュニティインタビュー #2]

毎年6月は、LGBTQ+の権利について啓発を促すイベントやパレードが世界各地で行われる「プライド月間(Pride Month)」です。

イベント・コミュニティプラットフォームのピーティックスでも、LGBTQ+コミュニティによってさまざまなイベントが開催されています。

そこで、プライド月間を記念して、LGBTQ+当事者とその周囲の人々をサポートするコミュニティの主催者へインタビューを行いました。

今回お話を伺ったのは、tomoni.の宝本いつみさん、吉川ヒロさん。

「なにひとつおいていかない」を大切に、対話し、 場を共にし、それぞれの声に耳を傾けて、いのちを大切にするユニットとして 2021年10月に結成。

性の多様性を含めたあらゆる違いが豊かさになる社会を目指して、多様な性を切り口にした人権研修や出前授業、外部講師を招いたワークショップ等を関西を中心に実施されています。


tomoni. 宝本いつみさん
1989年生まれ。大阪府出身・在住。
中学生のころから「どうしたら世界は平和になるのか」という問いを持ちつつ、大学時代は途上国でのボランティア活動に参加。周囲に生きづらさを抱える友人が多くいたことから、人の内面や環境との相互影響に関心が向く。2018年度よりスクールソーシャルワーカーとして活動。同時に、人間の意識やつながりの創出について学び、「みんなと一緒に」「自分を生きること」を探求中。内側の変容と外側の変革を両方していきたい。対話の場づくりや自分のマイノリティ性を活かした多様な性の講座も行なっている。
人の自然体を写真に撮ることが好き。


tomoni. 吉川ヒロさん
1989年生まれ。大阪府在住。
 4歳頃に「からだと自分の性別が違うようだ」と気づき、人と違う自分を意識し始める。学生時代のマレーシア植林ワークキャンプやアメリカでの国際会議などを経て、生まれや性別、国籍、経済状況などの様々な違いが「差」になることに疑問を持つ。違いが豊かさとなり、自分と相手の”らしさ”の尊重が両立する世界の作り方を、社会と個人の両面から探求を続ける。 20歳でトランスジェンダー男性/パンセクシュアルであることをカミングアウト。同時期から教育現場での多様な性を切り口とした人権講演や、LGBTQ+や教育関連の相談業務に関わる。
魂を揺さぶり自分らしさを呼び醒ます講演家として活動中。


ーーいつみさん、ヒロさん、本日はどうぞよろしくお願いいたします!早速ですが、tomoni.さんの活動内容をご紹介いただけますか?

吉川ヒロさん(以下 ヒロさん):
僕らはセクシャルマイノリティーの一員で、性の多様性を含めたいろんな違いが、お互いの豊かさ・力になる社会を目指しています。
学校で人権講演やワークショップを行ったり、 「サークル」といって、輪になってみんなで座り、思ってることや感じてることを話すという多様性理解・自他尊重を深める授業や、外部のファシリテーションの講師の方を招いて、すれ違いや葛藤が起こった時にどう解決していくのかという葛藤解決のワークショップなどを開催しています。

自分たちや友人、つながっている人たちが必要としていることを軸に企画しているので、「LGBTQ+当事者からカミングアウトを受けたことがある人」が集まって話せる場など、当事者以外を対象にしたイベントも行っています。

tomoni.さん主催イベントはこちら▼
https://tomoni.peatix.com/ 


ーー「なにひとつおいていかない」ことをスローガンとされていますが、その言葉にはどんな想いが込められていますか?

ヒロさん:
まず一つ目は、自分の内側の感情です。人は誰しも、自分の中に相反する考えや「こんなん思ったらあかん」と抑え込んでいる気持ちがあると思います。外で表現している考え方やキャラクターだけではなく、普段は表に出していないような、自分では認めにくい気持ちもおいていかずに気づいていたい、という意味を込めています。

二つ目は、社会においてです。社会の中では、どうしても多数派と少数派に分かれることがあり、少数派の声は耳を傾けられなかったり、社会に存在していないように扱われてしまうことがあります。そうした少数派の想いや考え・文化にも目を向け、光を当てることを大切にしています。


ーーお二人が活動を始められた背景やきっかけは何だったのでしょうか?

ヒロさん:
もともとはお互いに個人で活動していて、僕の方は大学生の時から10年以上、主に学校で性の多様性をテーマに人権講演を行ってきました。子どものころから性自認や性指向を巡って「周囲の人とどこか違う」という不安感や孤独感、外見ではわからないゆえにマジョリティだと見なされること、将来のロールモデルが見えにくい、つながりが持ちにくいなどの悩みを抱えてきました。自分がそれらを乗り越えてきたのは一人の力ではなく、いろいろな人とつながり、表現することができたからだと思っています。

自分はたまたま環境に恵まれましたが、そうではない人たちがいる中で、自分はハッピーだからいいや、だけでは納得できないと感じていたんですよね。かつての自分のように困っている人たちのために何かしたいと思っていたときに、同じような想いを持ついつみと出会い、一緒に活動を始めることにしました。

宝本いつみさん (以下 いつみさん):
二人とも自己探求が趣味みたいなところがあり、どうしたらもっと自分らしく生きていけるのか、なりたい自分でいられるのか、という視点を持っていました。

社会活動として目に見えやすいのは社会制度を変えるアプローチや当事者が集まる居場所づくりですが、社会を変えると同時に自分自身も変わっていくことを大事にしているところも似ていました。

ヒロさん:
同性婚ができないという制度などがある中で、社会も変わらないと自分が自分らしく生きるのは難しいですし、じゃあ社会が変われば生きやすくなるのかというとそうでもなくて、自分の中での葛藤やネガティブな気持ちもケアしていかないといけないと思っていたんですよね。

自己探求と社会活動、どちらも大切にしたいというのが二人がマッチした理由だったのかなと思います。


ーー活動していてよかったと感じるのはどんな時ですか?

ヒロさん:
印象深いのは、セクシャルマイノリティ当事者と対人支援を行っているアライ(LGBTQ+を理解し、支援したいという考えを持つ人や団体)の方々を対象に実施した合宿です。SNSなどでは言えないようなリアルな想いを話すことができた会でした。

アライの立場で来てくれた人が日頃感じている戸惑いや傷つけてしまうのではないかという不安を語ったり、世の中では「LGBTQ+」とひとくくりにされてしまいがちなセクシャルマイノリティ内での多様性が可視化されました。
Xジェンダー、トランスジェンダー、アセクシャル、レズビアン、ゲイなど、セクシャリティだけでもめちゃめちゃ多様だし、もちろん中身だって一人ひとり全然違うんですよね。でも社会の中で不可視化されている状況は一緒だったりするので、 お互いが違うということを前提に、ざっくばらんに思っていることを話せる場でしたね。

いつみさん:
セクシャルマイノリティの人に限らず、痛みや辛さを見て見ぬ振りして生活を続ける、という生き方をしている人が多いですよね。本当は傷ついてる自分がいるのに、表向きには大丈夫な振りをしていたり。
合宿では、「ワークを通して癒されて、 自分としての入り口に立てた」と言ってくれた方もいました。押し殺していた部分が解きほぐされて希望が見えたりなど、そういう瞬間は本当にやっていてよかったなと感じます。

マイノリティ・マジョリティ関係なく、自分を押し殺して立派な人にならなければいけないと頑張る世界で、しんどかったこととか、本当はこうしたかったとか、いろんな想いに気づいて、表現して、受け止めてもらって、ということが必要な人はたくさんいると思います。なので、すべての人に必要なことを実直にやっているなという実感があります。


ーー最後に、6月のプライド月間にあたってLGBTQ+当事者やアライへメッセージをお願いできますか?

ヒロさん:
いろんな運動が広がっていくにつれて、誤解が生まれたり、バッシングされることはよくあると思います。生きてることそのもの、自分が自分であることが1番の抵抗ですし、社会を良くするためにマイノリティとして生きているわけではないので、個人としてただただ幸福であればそれだけで本当に十分だと思います。

自分らしく生きることを追求するのは当然ですし、当事者の方はのびのび生きることをたくさん味わってほしいです。 「自分らしくある」というのは、キラキラ元気でいることではなく、 しんどい時にしんどいと言うとか、何もできない時に何もできないままでいるとか、そういう「あるがまま」でいてもいいよね、とお互いに言い合って生きていきたいなって思います。

あと、アライもまたマイノリティだと思っていて。「セクシャルマイノリティを支援します」、「自分たちが一緒にいます」と表明している人たちは、全体から見ると多くないと思うんです。アライとして様々なセクシャルマイノリティに関わるほど、マイノリティの痛みを感じますが、「自分はマイノリティではない」という葛藤や悩みもありますよね。
セクシャルマイノリティでもある僕は、自分以外のセクシャリティの人のアライ、そして「アライのアライ」でもありたいとも思っているので、 一緒に学びましょうと伝えたいです。

いつみさん:
自分の痛みを他人の痛みと比べないで、と伝えたいです。

それはマイノリティもアライも一緒で、 「自分の痛みはあの人よりましだから頑張らないと」とか「マイノリティが苦しんでいるのを支える立場だから、自分がしんどいなんて言えない」とか、人はどうしても自分の痛みを過小評価してしまいがちです。
自分の痛みを受け止められるのはまず自分ですし、「弱いままで、強くありたい」と思っています。
みんなで自分らしく生きることを目指していくことはもちろんですが、無理に頑張ろうと痛みを無視しないで、一緒に抱えましょうと思っています。


ーーいつみさん、ヒロさん、ありがとうございました!

tomoni.
ピーティックスページ:https://tomoni.peatix.com/ 
ウェブサイト:https://tomoni-to-tomoni.amebaownd.com/



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