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「鍼灸師の未来をつなぐ学びの場」~学びが広げるつながりと新たな可能性~ [医療系コミュニティインタビュー#3]

日本の医療業界には、日々多くの命と向き合い続けるプロフェッショナルたちがいます。

ピーティックスでは、医師や薬剤師、看護師など、医療業界を支える人々が集まり、それぞれの経験や知識を共有する場としてご利用いただいています。

今回は、そんな医療の最前線で活躍する方々と、彼らのコミュニティにスポットライトを当て、その活動や取り組みについてお話を伺いました。


今回お話を伺ったのは、鍼灸師の学校NEXTを運営する川畑 充弘(かわばた みつひろ)さん。
鍼灸師の学校NEXTは、鍼灸師の自己変革を応援する鍼灸師のための生涯学習プラットフォームです。各領域をリードする講師陣から直接学ぶ鍼灸セミナーやクラスを提供することで、「知る・体験する・実践する」のサイクルを通して鍼灸師の成長を応援しています。

1978年千葉県我孫子市出身。2000年立教大学経済学部卒、同年英国系製薬のグラクソ・スミスクライン㈱入社。医療用医薬品部門の営業本部、マーケティング本部を経て退社、独立。13年Do Oriented㈱代表取締役、16年ディーネクスト㈱代表取締役に就任。「麻布ハリーク」「ハリメリー」など美容鍼灸院の運営、日本メディカル美容鍼協会の運営を行う。 21年、鍼灸の新しい未来創造のために「鍼灸師の学校NEXT」を始動。


ーー本日はどうぞよろしくお願いいたします!まずは、川畑さんのご活動について教えてください。

鍼灸師さん、そして鍼灸の専門学校に通う学生さん向けの生涯学習プラットフォームの運営をしています。多くはオンラインの講座で、日本全国、あとは海外からも学びにくる方がいらっしゃいます。オンライン講座では、鍼灸にまつわる各領域の先頭を走っている講師の先生を招いて、鍼灸に関する講義やクラスを提供しています。また最近では、鍼灸実技習得のためのクラスも開催しています。


ーーこの活動を始めようと思った背景は何だったんですか?

鍼灸師の学校NEXTは、その名の通り、「鍼灸師のための学校」がコンセプトです。鍼灸師は国家資格で、細かく言うとはり師ときゅう師の2つの資格がありますが、多くの方が両方を同時取得するため、一般的に「鍼灸師」という言います。鍼灸師になるためには、専門学校もしくは専門の大学に3~4年間通います。そして最後に国家試験を受けて合格して、晴れて鍼灸師になります。

ですが、医師が大学を卒業した後、大学病院で研修医として様々な科を経験し、自分の専門を決めていくのとは違い、鍼灸師にはそういった卒後教育機関がほとんどありません。資格を取った瞬間から野に放たれちゃうんですよ。実際に医師として国家試験に合格したからといって、すぐに臨床医とて活躍できるかというと別じゃないですか。それと一緒で、鍼灸師もやはり卒後も沢山のことを学ばなければいけないし、経験を積まないといけないんです。

卒業後の選択肢としては、就職するか、いきなり開業するという人も0ではないです。
就職を選んだ人は、就職した先のやり方を覚えたり、先輩から体の治療について学んだりします。お顔に鍼を打つ美容鍼では、美容を目的とした施術を学びますが、手技やレベルも人によってバラバラなので、教育のクオリティが一定ではないし、質が担保されてないという大きな問題があります

また、鍼灸師は業界団体や学会への所属率が極めて低く、理学療法士などに比べて、トップダウンでの統一した教育ができません。なので、それぞれの就職先で先輩から教えてもらうことが全てだったりします。
「ここでちゃんと勉強しておけば間違いないな」と思えるような、鍼灸師として生涯をかけて学び続けられるプラットフォームを作らないとまずいなと思って、立ち上げたのがスタートです。


ーー川畑さんが考える鍼治療の良さは何ですか?

鍼と言えば、肩こりや腰痛の治療として有名だと思うんですが、最近はいろんな分野で研究が進んでいて、実際に科学的に効果があると認められてきている分野でいうと、疼痛緩和以外に、頭痛、鬱、不眠、そして女性のホルバランスの変化による身体の不調の改善だったり、更年期障害の症状の緩和だったり。効果が1つに限定されずに、様々な有効性があることはまだ世の中に浸透していないと感じています。


ーー活動を続けていて良かったと思うことは何ですか?

ウェルビーイング経営やビジネスコンセプト作りなど、治療院経営を深掘って考えるようなクラスを何回か行ったことがあります。その中で、2年半前にクラスを受けていた皆さんが先日オンライン上で同窓会を開催していたのですが、実際にお互いの治療院に見学に行ったり、一緒に何かやったりと、オフラインでもいろんな形で発生していたことを知りました。

鍼灸師さん同士のコラボレーションみたいなものが生まれて、お互いに刺激になったという話を聞いて、やっていてよかったなと思いました。


ーーターニングポイントとなった出来事は?

最初の1年目で、まだサービスや業界の認知度が今ほど高くなかった時期に、脳科学者の茂木健一郎先生をゲストにお招きし、現地とオンラインを組み合わせたライブセミナー、いわゆるハイブリッドセミナーを開催しました。

この業界の規模からすると、著名な方を招くようなことは珍しいので、非常に大きなインパクトがありました。そのセミナーの情報は、今でもウェブサイトに掲載しているんですが、業界内での認知拡大にもつながる良いきっかけになったと感じています。


ーー川畑さんが鍼灸師の学校NEXTを運営されてる中で、1番大切にされていることは何ですか?

やはり、参加した皆さんの、明日からの鍼灸師人生が良い方向に変わってほしいということは常に思っています。

鍼灸師さんには皆さんそれぞれに患者さんがいるので、学べば学ぶほどその患者さんをより助けられるようになりますし、 経営の面であれば、経営力がついて、商売繁盛して、その方の人生がより良くなっていく。鍼灸師の学校NEXTに参加したことで、必ず明日以降の人生が良くなっていくように、という気持ちでやっています。

参加した方からは、その後、治療院が2店舗増えましたとか、新しくスタッフさんを雇いましたとかお話を聞くこともあります。また、ここで学んだことをこういう風に活かして、今ブレずに鍼灸治療を続けて幸せにやってますみたいなお話をいただけると、やっぱりやっていてよかったなって思いますよね。


ーー今後、力を入れていきたい活動は何ですか?

ちょっと正確な数が難しいんですが、鍼灸師さんって、20万人近く登録されているんですね。ただ、実際に仕事として鍼灸師をしている人は、10万人~12万人といわれていて、それ以外の人はもう引退されたり、別の仕事をされたりしているんです。私たちのところに登録してくださっている鍼灸師さんは、ざっと1万人ほど。

鍼灸師が12万人いるとしたら、登録者が1万2000人いたとしても、10パーセントの登録しかなくて、その1万人近くの方も、1つのイベントに全員参加してくれるわけじゃない。
結局、インパクトのある企画を作っても、 鍼灸師の全体のほんの数パーセントにしか情報を届けられていないことになるので、これはもっと増やしていく必要があるなと思っています。

最初に申し上げたように、学会や業団など、広域的な活動をされている団体が、安全性などについて大事な情報を流してくださるんですが、鍼灸師は団体所属率が極めて低いので、少しでも広く大切な情報を届けるサポートを公益的にしていきたいです

鍼灸業界全体にインパクトをもたらし、その先にいる患者さんに良い影響を与えられるように、もっと影響力を増やしていきたいです。


ーーありがとうございます。最後に、鍼灸に携わる方々へメッセージをお願いいたします。

人の価値観は大きく変わってきています。特に健康面では、寿命を伸ばすことや病気を治すことよりも、いかに病気を予防するかという「予防医学」の考え方が進んでいますね。
さらに現在では、身体的な健康だけでなく、ウェルビーイングの観点から、毎日幸せを感じながら生きることや、仕事を前向きに頑張るための心身の健康がとても重視されるようになってきています。

体に痛みがあったり、慢性的な頭痛が続いていたりしても、病院では特に異常ないですよ、と言われることがありますよね。こうした「不定愁訴」が、快適な生活を妨げる要因です。美容においても、例えば肌のたるみで憂鬱な気分になったりすることがあると思いますが、これらは病院で治療するほどではない場合が多いです。

東洋医学では、こうした状態を「未病」と呼び、「未病治」という言葉は未病を治すことを指しますが、今の時代は、この「未病治」の考え方にやっと追いついてきたかなと思います。病気を治す段階に至る前に、自分の心と体をメンテナンスして、より快適でポジティブな日々を送ることが大切で、そのための技術として、鍼灸は非常に優れていると思います。

鍼灸師の皆さんには、西洋医学では対処しづらいこうした得意分野にもっと目を向けていただき、人が困っているニーズをしっかり捉え、それに関する知識を深めて情報発信をしていくことで、鍼灸師としてもきっと生きやすくなるだろうし、いろんな方にも喜んでもらえて、より良い社会を作る一員になれるんじゃないかなと思います。


ありがとうございました!
ピーティックスは、これからも川畑さんと鍼灸師の学校NEXTのご活動を応援しています。


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